万葉集巻第七1090-1098番歌(いにしへのことは知らぬを)~アルケーを知りたい(1329)
▼今回は雨と山を詠んだ歌。遊び心ありの明るい歌たち。
雨を詠む
我が妹子が赤裳の裾のひづつらむ 今日の小雨に我れさへ濡れな 万1090
*かわいい彼女の赤裳の裾に泥が着くかも知れないな。今日の小雨に私も濡れてゆこう。
通るべく雨はな降りそ我妹子が 形見の衣我れ下に着り 万1091
*服に浸み通るほどの雨は降らないで欲しい。彼女がプレゼントしてくれた肌着を着ているから。
山を詠む
鳴る神の音のみ聞きし巻向の 檜原の山を今日見つるかも 万1092
*人から話だけ聞いていた巻向の檜原山を今日、やっと見たのだ。
みもろのその山なみに子らが手を 巻向山は継ぎのよろしも 万1093
*三輪山の山なみは巻向山の続き具合がまことによろしい。
我が衣にほひぬべくも味酒 三室の山は黄葉しにけり 万1094
右の三首は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。
*私の衣に色移りするほど三諸山が黄葉しています。
みもろつく三輪山見ればこもりくの 泊瀬の檜原思ほゆるかも 万1095
*三輪山を見ていると泊瀬の檜原を連想します。
いにしへのことは知らぬを我れ見ても 久しくなりぬ天の香具山 万1096
*昔のことは知らない私ですけど、そんな私が見ても時代を経たのが伝わる天の香具山です。
我が背子をこち巨勢山と 人は言へども君は来まさず山の名にあらし 万1097
*人は私の夫を「こちらに来る巨勢山」と言います。けれど、本人は山の名前のようには来ないのです。
紀伊道にこそ妹山ありといへ玉櫛笥 二上山も妹こそありけれ 万1098
*世間は紀伊道にだけ妹山があると言ってます。でも二上山にも妹山があるんですよ。
【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から:中臣宮処 東人 なかとみのみやところ の あずまびと ? - 738年 奈良時代の官人。729年、聖武天皇に長屋王を誣告(ぶこく。わざと事実と異なる内容で人を訴えること)。大伴子虫と囲碁に興じていた時、話題が長屋王に及ぶにあたり、怒りを発した子虫に斬殺された。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7
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