万葉集巻第七1178-1184番歌(海人小舟帆かも張れると)~アルケーを知りたい(1345)

▼昔から瀬戸内海は舟便が発達していたのが伝わる歌群。海面と人の目の距離が近い。波も大きく見えたことだろう。海から見る風景は格別だったことだろう。

院南野は行き過ぎぬらし天伝ふ 日笠の浦に波立てり見ゆ 一には「飾磨江は漕ぎ過ぎぬらし」といふ 万1178
*我われの舟は院南野を通り過ぎたようです。はるか向こうの日笠浦に波が立っているのが見えます。

家にして我れは恋ひむな院南野の 浅茅が上に照りし月夜を 万1179
*家に帰ったら、院南野の浅茅で見た月夜を恋しく思い出すことでしょう。

荒磯越す波を畏み淡路島 見ずか過ぎなむここだ近きを 万1180
*荒磯を越す勢いで打ち寄せている波が怖いので、淡路島を見ないまま通り過ぎましょう。こんなに近いのですけど。

朝霞やまずたなびく竜田山 舟出しなむ日我れ恋ひむかも 万1181
*朝霞が止むことなくたなびく竜田山。舟で出発する日になると懐かしいと思うのでしょう。

海人小舟帆かも張れると見るまでに 鞆の浦みに波立てり見ゆ 万1182
*海人が小舟に帆を張っていると見まがうほど、鞆の浦に波が立っているのが見えます。

ま幸くてまたかえり見むますらをの 手に巻き持てる鞆の浦みを 万1183
*再び帰って来て見たい鞆の浦です。

島じもの海に浮き居て沖つ波 騒ぐを聞けばあまた悲しも 万1184
*島でもないのに海でうねって高くなる沖の波。波の音を聞くと悲しくなります。

【似顔絵サロン】同時代の乱、藤原広嗣の乱の関係者:藤原 良継 ふじわら の よしつぐ / 宿奈麻呂 すくなまろ 716年 - 777年 奈良時代の公卿。藤原宇合の次男。兄・広嗣の乱に連座して伊豆国へ流罪。2年後、赦免。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

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