万葉集巻第七1185‐1190番歌(網引する海人とか見らむ)~アルケーを知りたい(1346)
▼今回の海を詠う6首の歌は、景色を楽しむ内容なので、気楽に読める。風景がエンタテイメント、というか、風景を楽しむのがエンタテイメントというか。
朝なぎに真楫漕ぎ出て見つつ来し 御津の松原波越しに見ゆ 万1185
*朝なぎなので、舟を出して見物にやってきましたよ。御津の松原が波の向こうに見えますね。
あさりする海人娘子らが袖通り 濡れにし衣干せど乾かず 万1186
*一所懸命漁をする漁師たちの袖はびっしょり濡れています。干しても乾かないだろう、と思うくらい。
網引する海人とか見らむ 飽くの浦の清き荒磯を見に来し我れを 万1187
右の一首は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。
*人は私を漁師と思うかも知れません。飽浦の清らかな荒磯を見物に来ているのですが。
山越えて遠津の浜の岩つつじ 我が来るまでにふふみてあり待て 万1188
*遠津浜の岩つつじよ、山を越えて私が来るまで蕾のままで居てください。
大海にあらしな吹きそしなが鳥 猪名の港に舟泊つるまで 万1189
*しなが鳥よ、大海に嵐が吹き荒れないようにしておくれ。猪名港に我らの舟が泊まるまで。
舟泊ててかし振り立てて廬りせむ 名児江の浜辺過ぎかてぬかも 万1190
*舟を泊めて係留柱を立てて宿を取りましょう。名児江の浜辺を見物せずに素通りするなんてできませんから。
【似顔絵サロン】同時代の乱、藤原広嗣の乱の関係者:藤原 田麻呂 ふじわら の たまろ 722年 - 783年 奈良時代の公卿。藤原宇合の五男。兄・広嗣の乱に連座して隠岐国に配流。2年後、赦免、帰京。政治とは関わらず、山中に隠棲。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7
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