万葉集巻第七1162-1168番歌(夕なぎにあさりする鶴)~アルケーを知りたい(1342)
▼干潟の生態系の観察記の和歌。鶴、洲、波、浦、舟、磯、干満、藻・・・。 円方の港の洲鳥波立てや 妻呼び立てて辺に近づくも 万1162 *円方港の洲にいる鳥は妻を呼びながら岸の方に飛んでいます。波が立ち始めたからでしょうか。 年魚市潟潮干にけらし知多の浦に 朝漕ぐ舟も沖に寄る見ゆ 万1163 *年魚市潟の潮が干潮なので、知多の浦を朝漕いでいた舟が沖の方に寄っているのが見えます。 潮干ればともに潟に出で鳴く鶴の 声遠ざかる磯廻すらしも 万1164 *潮が引くと揃って潟で鳴いていた鶴の声が遠ざかります。磯廻りを始めたのでしょう。 夕なぎにあさりする鶴潮満てば 沖波高み己が妻呼ぶ 万1165 夕なぎの時に魚を捕っていた鶴は、潮が満ちて波が高くなると自分の妻を呼びます。 いにしへにありけむ人の求めつつ 衣に摺りけむ真野の榛原 万1166 *ここは昔の人が探し求めては衣を染めていたという原料が取れる真野の榛原です。 あさりすと磯に我が見しなのりそを いづれの島の海人か刈りけむ 万1167 *漁のときに磯で見つけておいた海苔。どこかの島の海人が見つけて先に刈り取ったようです。 今日もかも沖つ玉藻は白波の 八重をるが上に乱れてあるらむ 万1168 *今日もまた沖の玉藻は白波が何重にも寄せて乱れているのでしょう。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 多治比 三宅麻呂 たじひ の みやけまろ ? - 725年 飛鳥時代後期~奈良時代前期の貴族。長屋王と藤原四兄弟の対立に巻き込まれ流罪。長屋王側の人物。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7