投稿

11月, 2024の投稿を表示しています

万葉集巻第七1162-1168番歌(夕なぎにあさりする鶴)~アルケーを知りたい(1342)

イメージ
▼干潟の生態系の観察記の和歌。鶴、洲、波、浦、舟、磯、干満、藻・・・。 円方の港の洲鳥波立てや 妻呼び立てて辺に近づくも  万1162 *円方港の洲にいる鳥は妻を呼びながら岸の方に飛んでいます。波が立ち始めたからでしょうか。 年魚市潟潮干にけらし知多の浦に 朝漕ぐ舟も沖に寄る見ゆ  万1163 *年魚市潟の潮が干潮なので、知多の浦を朝漕いでいた舟が沖の方に寄っているのが見えます。 潮干ればともに潟に出で鳴く鶴の 声遠ざかる磯廻すらしも  万1164 *潮が引くと揃って潟で鳴いていた鶴の声が遠ざかります。磯廻りを始めたのでしょう。 夕なぎにあさりする鶴潮満てば 沖波高み己が妻呼ぶ  万1165 夕なぎの時に魚を捕っていた鶴は、潮が満ちて波が高くなると自分の妻を呼びます。 いにしへにありけむ人の求めつつ 衣に摺りけむ真野の榛原  万1166 *ここは昔の人が探し求めては衣を染めていたという原料が取れる真野の榛原です。 あさりすと磯に我が見しなのりそを いづれの島の海人か刈りけむ  万1167 *漁のときに磯で見つけておいた海苔。どこかの島の海人が見つけて先に刈り取ったようです。 今日もかも沖つ玉藻は白波の 八重をるが上に乱れてあるらむ  万1168 *今日もまた沖の玉藻は白波が何重にも寄せて乱れているのでしょう。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 多治比 三宅麻呂  たじひ の みやけまろ ? - 725年 飛鳥時代後期~奈良時代前期の貴族。長屋王と藤原四兄弟の対立に巻き込まれ流罪。長屋王側の人物。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1157-1161番歌(住吉の沖つ白波風吹けば)~アルケーを知りたい(1341)

イメージ
▼海風が吹くときの海岸の様子を詠った歌の数々。海を見たくなる。潮の匂いを嗅ぎたくなる。 時つ風吹かまく知らず吾児の海の 朝明の潮に玉藻刈りてな  万1157 *潮の風が吹くかも知れません。吾児の海では朝明けの間に玉藻を刈りましょう。 住吉の沖つ白波風吹けば 来寄する浜を見れば清しも  万1158 *住吉の沖で白波を立てるほどの強い風が吹くとき、浜に寄せる波のなんと清いことでしょう。 住吉の岸の松が根うちさらし 寄せ来る波の音のさやけさ  万1159 *住吉の岸の松の根を洗うように寄せ来る波の音。なんと清々しいことでしょう。 難波潟潮干に立て見わたせば 淡路の島に鶴渡る見ゆ  万1160 *難波潟が干潮の時に立って見わたしていると、淡路島に向けて鶴が渡っているのが見えます。  羇旅作 家離り旅にしあれば秋風の 寒き夕に雁鳴き渡る  万1161 *家を離れて旅の途上です。秋風が寒い夕べの時刻、雁が鳴きながら飛んでいます。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 舎人親王  とねりしんのう 676年 - 735年 天武天皇の皇子。政治家・歌人。長屋王の変では新田部親王らと共に長屋王を糾問。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1151-1156番歌(楫の音ぞほのかにすなる)~アルケーを知りたい(1340)

イメージ
▼今回も大阪の住吉の歌。海辺に立って波を見たくなる。 大伴の御津の浜辺をうちさらし 寄せ来る波のゆくへ知らずも  万1151 *大伴氏の御津の浜辺を波がざんざと寄せては返しています。波の行方は誰も知りません。 楫の音ぞほのかにすなる海人娘子 沖つ藻刈りに舟出すらしも   一には「 夕されば楫の音すなり 」といふ  万1152 *楫の音がかすかに聞こえてきます。漁師たちが沖へ藻を取るために舟を出しているようです。 「夕方になると楫の音がします」 住吉の名児の浜辺に馬立てて 玉拾ひしく常忘らえず  万1153 *住吉の名児の浜辺で馬を駐めて玉を拾いました。この思い出は忘れられませんね。 雨は降る仮廬は作るいつの間に 吾児の潮干に玉は拾はむ  万1154 *雨は降るし仮廬は作らないといけない。忙しいなか、どのタイミングで吾児の潮干で玉を拾えば良いのでしょうか。 名児の海の朝明のなごり今日もかも 磯の浦みに乱れてあるらむ  万1155 *名児の海の朝明の潮だまりが残っています。今日も磯の浦のあちこちに残っています。 住吉の遠里小野の真榛もち 摺れる衣の盛り過ぎゆく  万1156 *住吉からちょっと離れた里の小野にあるハンの木。その染料で染めた衣の色が薄くなっています。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 新田部親王  にいたべしんのう ? - 735年 天武天皇の皇子。長屋王と皇親政権。長屋王の変では舎人親王らと罪の糾問に当たる。子が道祖王。邸宅の土地を 鑑真 に提供、唐招提寺になる。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1143-1150番歌(馬並めて今日我が見つる)~アルケーを知りたい(1339)

イメージ
▼今回は住吉の海を詠う歌8首。現在の大阪市住吉区。「馬並めて (友達と馬を並べて) 」のフレーズが好きなので、すぐ目が行ってしまう1148番。 さ夜更けて堀江漕ぐなる松浦舟 楫の音高し水脈早みかも  万1143 *夜が更けました。堀江を松浦舟が漕ぎ進んでいますね。楫の音が大きいのは流れが早いからでしょう。 悔しくも満ちぬる潮か住吉の 岸の浦みゆ行かましものを  万1144 *残念ながら潮が満ちてきましたよ。住吉の岸の浦に行こうと思っていましたのに。 妹がため貝を拾ふと茅渟の海に 濡れにし袖は干せど乾かず  万1145 *妻の土産にしようと思って貝を拾いました。茅渟の海で濡れた袖は干しても乾きません。 めづらしき人を我家に住吉の 岸の埴生を見むよしもがも  万1146 *珍しい人が我が家にやってきました。住吉の岸の埴生の貴重な土を見れたらよいのに。 暇あらば拾ひに行かむ住吉の 岸寄るといふ恋忘れ貝  万1147 *機会があれば住吉の岸にあるという恋忘れ貝を拾いに行こうかな。 馬並めて今日我が見つる住吉の 岸の埴生を万代に見む  万1148 *馬を並べて今日我われが見に来た住吉の岸の埴生。これから先もずっと見たいものです。 住吉に行くといふ道に昨日見し 恋忘れ貝言にしありけり  万1149 *住吉に行くという道で昨日見た恋忘れ貝。名前だけのものだったよ。 住吉の岸に家もが沖に辺に 寄する白波見つつ偲はむ  万1150 *住吉の岸に家があったらなあ。いつでも沖や岸辺に寄せる白波を見ていられるのに。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 藤原 麻呂  ふじわら の まろ 695年 - 737年 奈良時代の公卿。藤原不比等の四男。藤原四兄弟の四男。藤原京家の祖。 上には聖主有りて、下には賢臣有り僕のごときは何を為さんや。なお琴酒を事とするのみ 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1140-1142番歌(命をし幸くよけむと)~アルケーを知りたい(1338)

イメージ
▼今回の3つの歌は、その人のその時の経験を述べたもの。教訓があるわけでもなく、だから何?と反応しても良さそうな作品。でも、ああそうなんだ、そういうこともあるのか、と頷きながら味わうタイプの作品なのだろう。まだ後者の反応の域には遠い私なれど、こういう歌もあり、そういう反応もあり、ということは分かるような気がする。  摂津作 しなが鳥猪名野を来れば有馬山 夕霧立ぬ宿りはなくて   一には「猪名の浦みを漕ぎ来れば」といふ  万1140 *猪名野までやって来ると有馬山が見えます。夕霧が立ち始めたけど、まだ宿が見つかっていません。 武庫川の水脈を早みと赤駒の 足掻くたぎちに濡れにけむかも  万1141 *武庫川の流れが早いので、赤馬の足から飛び散る水しぶきでこっちまで濡れちまいました。 命をし幸くよけむと石走る 垂水の水をむすびて飲みつ  万1142 *健康長寿を祈って勢いよく落ちる滝の水を両手で飲みました。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 藤原 宇合  ふじわら の うまかい 694年 - 737年 奈良時代の公卿。藤原不比等の三男。藤原四兄弟の三男。藤原式家の祖。729年、長屋王の変のさい、宅を包囲した。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1135-1139番歌(宇治川に生ふる菅藻を)~アルケーを知りたい(1337)

イメージ
▼山背(やましろ)はいまの京都府。5首とも 宇治川を詠っているので宇治川作にしても良かったのに。1138番を見て、昔、タクシーを探して捕まえられなかったことを思い出しました。公園で タクシーをと呼ばへども 聞こえずあらし車の音もせず  山背作 宇治川は淀瀬なからし網代人 舟呼ばふ声をちこち聞こゆ  万1135 *宇治川は流れが緩やかな浅瀬がないらしい。網代を仕掛ける漁師が舟を呼ぶ声があちこちから聞こえてきます。 宇治川に生ふる菅藻を川早み 採らず来にけりつとにせましを  万1136 *宇治川の流れが早いので菅藻が採れませんでした。土産にしたかったのですけれど。 宇治人の譬への網代我れならば 今は寄らまし木屑来ずとも  万1137 *宇治の人の例えに使われる網代ですけど、私なら、とっくに寄り付いてます。他の木っ端は来る必要なし、です。 宇治川を舟渡せをと呼ばへども 聞こえずあらし楫の音もせず  万1138 *宇治川を渡りたいので、舟を出してくれと呼んでるんだけど、聞こえないらしい。楫の音もしない。 ちはや人宇治川波を清みかも 旅行く人の立ちかてにする  万1139 *宇治川の川波がとても清らかなので、旅人が立ち去り難い様子です。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 藤原 房前  ふじわら の ふささき 681年 - 737年 飛鳥時代~奈良時代前期の貴族。藤原不比等の次男。藤原四兄弟の次男。藤原北家の祖。政治的力量は兄弟の間で随一。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1130-1134番歌(神さぶる岩根こごしき)~アルケーを知りたい(1336)

イメージ
▼今回は吉野を 岩、水、山、川で 褒める歌5首。日本中どこでもあるものだけど、神さびているのが吉野ならでは。  吉野作 神さぶる岩根こごしきみ吉野の 水分山を見れば悲しも  万1130 *神さびた岩がごつごつしている吉野の水分山。見ていると悲しくなるほど身が引き締まります。 皆人の恋ふるみ吉野今日見れば うべも恋ひけり山川清み  万1131 *みんな大好き吉野の景色。今日見ると、それももっともなことよ、山や川が清らかに澄んでいます。 夢のわだ言にしありけりうつつにも 見て来るものを思ひし思へば  万1132 *夢のわだは、今までは人から聞くだけでした。それを今日はこの目で見て来ましたよ。 すめろきの神の宮人ところづら いやとこしくに我れかへり見む  万1133 *代々、神にお伝えした宮人と同じく、私もこれからは吉野を見にもっと帰ります。 吉野川巌と柏と常盤なす 我れは通はむ万代までに  万1134 *吉野川は、 岩と柏の木で成り立っています。私はこれから先もずっと通います。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 藤原 武智麻呂  ふじわら の むちまろ 680年 - 737年 飛鳥時代~奈良時代前期の貴族。藤原不比等の長男。藤原四兄弟の兄。藤原南家開祖。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1127-1129番歌(琴取れば嘆き先立つ)~アルケーを知りたい(1335)

イメージ
▼井戸から湧く水の清らかさを讃える歌二首。ひとつは滋賀県大津市の走井の水。東海道五十三次のひとつ。もうひとつは、石で囲った井戸という意味の石井。そこから汲み出す水。日本は言霊と水の幸う国であることよ。1129番は、楽器の 倭琴 ( やまとごと ) をしげしげと眺めて詠う歌一首。  井を詠む 落ちたぎつ走井水の清くあれば 置きては我れは行きかてぬかも  万1127 *勢いよく流れ落ちる走井の水がとても清らかなので、じっくり眺めないまま通り過ぎるわけには参りません。 馬酔木なす栄えし君が堀りし井の 石井の水は飲めど飽かぬかも  万1128 *馬酔木のように栄えた貴方様が堀った井戸。その石井の水はいくら飲んでも飽きません。  倭琴を詠む 琴取れば嘆き先立つけだしくも 琴の下樋に妻や隠れる  万1129 *琴を手にすると嘆き節が湧いてくるのですけど、ひょっとして琴の中に妻が隠れているのでしょうか。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 黄文王  ぶみのおおきみ ? - 757年 長屋王の子。長屋王の変では、母が藤原不比等の娘であったことから同母兄弟の安宿王・山背王とともに罪を免れた。757年、橘奈良麻呂の乱に連座。 久奈多夫礼 (くなたぶれ=愚かな者)と改名させられた後、杖で打たれる拷問で刑死。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1122-1126番歌(佐保川の清き川原に)~アルケーを知りたい(1334)

イメージ
▼万葉集には、1122番のように川に呼びかけたりする歌がある。1124番のように鳥に呼びかけるのはいつものことなので普通。コミュニケーションの相手は人でなくてもOKの精神がよき。  鳥を詠む 山の際に渡るあきさの行きて居む その川の瀬に波立つなゆめ  万1122 *山あいを飛ぶ小鳥が行く先にある川よ。川の瀬であまり波を立てないでやってくれ。 佐保川の清き川原に鳴く千鳥 かはづと二つ忘れかねつも  万1123 *佐保川の清い川原で鳴く千鳥とカエル。二つとも忘れられない。 佐保川に騒ける千鳥さ夜更けて 汝が声聞けば寐寝かてなくに  万1124 *佐保川で騒いでいる千鳥よ 夜が更けてから鳴くとこちらは寝られないのだよ。  故郷を思ふ 清き瀬に千鳥妻呼び山の際に 霞立つらむ神なびの里  万1125 *清い瀬で千鳥が妻を呼んで鳴いている。山の際では霞が立つ神なびの里よ。 年月もいまだ経なくに明日香川 瀬々ゆ渡しし石橋もなし  万1126 *年月はそれほど経っていないのに、明日香川の瀬に渡しておいた飛び石の橋がなくなっている。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 安宿王  あすかべおう/あすかべのおおきみ ? - ? 奈良時代の皇族。長屋王の五男。長屋王の変では、母が藤原不比等の娘であったことから同母弟の黄文王・山背王とともに罪を免れた。757年、橘奈良麻呂の乱の後、佐渡に流罪。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1118-1120番歌(いにしへありけむ人も)~アルケーを知りたい(1333)

イメージ
▼1118番によると、万葉時代の人が枝をかんざしにしていたのは、植物の生命力を尊ぶ気持ちから、という。わたしも枝の代わりに帽子に缶バッチを付けています。1119番では、 檜は人に 枝を手折ってくれないとうらぶれるそうだ(笑)。これは手折る人の言い分。植物の管理人は勝手に枝を折られると怒っていたそうだから。  葉を詠む いにしへありけむ人も我がごとか 三輪の檜原にかざし折りけむ  万1118 *昔の人も私が今やっているように三輪の檜原で枝を折って簪にしたのでしょうか。 行く川の過ぎにし人の手折らねば うらぶれ立てり三輪の檜原は  万1119 *行く川の水のように過ぎ去った過去の人が手折ってくれなかったので、うらぶれて立っていますよ、三輪の檜原は。  蘿を詠む み吉野の青根が峰の蘿席 誰か織りけむ経緯なしに  万1120 *吉野の青根が峰を覆っている苔のムシロ。いったい誰が織ったのでしょう、縦糸も横糸もないのに。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 鈴鹿王  すずかおう ? - 745年 高市皇子の次男。長屋王は兄弟。長屋王の自殺後、屋敷を訪問した石川石足から、長屋王の兄弟姉妹・子孫とその妻を赦免する勅を伝えられた。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1107-1111番歌(いにしへもかく聞きつつか)~アルケーを知りたい(1332)

イメージ
▼今回も「河を詠む」シリーズの続き。水の流れ方が目に浮かび音が聞こえるよう。 泊瀬川白木綿花に落ちたぎつ 瀬をさやけみと見に来し我れを  万1107 *泊瀬川で白い木綿の花のように水が流れ落ちるすがすがしい瀬を見に来た私です。 泊瀬川流るる水脈の瀬を早み ゐで越す波の音の清けく  万1108 *泊瀬川の水の流れはとても早く、あちこちで立つ波の音が清らかに聞こえます。 いにしへもかく聞きつつか偲ひけむ この布留川の清き瀬の音を  万1111 *昔の人もこうやって耳を傾けたのでしょうか。この布留川の清い瀬の音を聞きながら。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 石川 石足  いしかわ の いわたり 667年 - 729年 飛鳥時代後期~奈良時代初期の公卿。長屋王の自殺後、鈴鹿王の邸宅に派遣され、長屋王の兄弟姉妹・子孫とその妻を赦免する勅を伝えた。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第七1103-1106番歌(馬並めてみ吉野川を)~アルケーを知りたい(1331)

イメージ
▼風景を見て心打たれる心情の歌4首。1104番は吉野川を見ようや、ということで友達と馬を並べて遠出した話。馬並(な)めて、という言い回しが好きなので、この表現を見るとおお!と思ってします。馬並めての言葉を見まく欲り、頁を打ち繰り万葉集に遊びつる。 今しくは見めやと思ひしみ吉野の 大川淀を今日見つるかも  万1103 *しばらくは見られないだろうと思っていた吉野の大川淀。なんと今日見ることが出来ました。 馬並めてみ吉野川を見まく欲り 打ち越え来てぞ滝に遊びつる  万1104 *吉野川を見たくなり、友人と馬を並べてここまで来て滝で遊びました。 音に聞き目にはいまだ見ぬ吉野川 六田の淀を今日見つるかも  万1105 *噂では聞いていたけれどまだ見たことがない吉野川。その六田の淀を今日、見ましたよ。 かはづ鳴く清き川原を今日見ては いつか越え来て見つつ偲はむ  万1106 *カエルが鳴く清い川原を今日見ました。いつかまた山を越えて来て、思い出すのが楽しみです。 【似顔絵サロン】巻7と同じ時代に起こった長屋王の変に関係する人々から: 巨勢 宿奈麻呂  こせ の すくなまろ ? - ? 奈良時代の貴族。長屋王の変のさい、朝廷に派遣されて長屋王の屋敷で罪の糾問にあたった。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7