万葉集巻第十九4177-4179番歌(我れのみ聞けば寂しも)~アルケーを知りたい(1564)
▼今回の長歌と短歌は、家持が友達の池主にホトトギスをネタにしてコミュニケーションを取っている作品。何の目的で、とか、何のメリットを期待して、歌を作って贈るのか、では計れない和歌コミュニケーションだと思ふ。大事な相手に気持ちを伝える行動。これは大事なことだと気づかせてくれる。 4177番は「明けくれば」と「夕されば」、もうひとつ 「 明け立てば」「夕されば」 のコントラストぶりと「 八つ峰には 」と「 谷辺には 」の並列ぶりが良い。マネしたくなる。 4178番は、一人で聞くと寂しくなるから池主さんにも聞こえるように、とホトトギスを介してお目にかかりたい気持ちを表明する。 4179番は、いたずらっぽい歌で読み手を微笑ませる。緩急も巧み。 四月の三日に、越前の判官大伴宿禰池主に贈る霍公鳥の歌 感旧の意に勝へずして懐を述ぶる一首 幷せて短歌 我が背子と 手携はりて 明けくれば 出で立ち向ひ 夕されば 振り放け見つつ 思ひ延べ 見なぎし山に 八つ峰には 霞たなびき 谷辺には 椿花咲き うら悲し 春し過ぐれば ほととぎす いやしき鳴きぬ ひとりのみ 聞けば寂しも 君と我れと 隔てて恋ふる 礪波山 飛び越え行きて 明け立てば 松のさ枝に 夕されば 月に向ひて あやめぐさ 玉貫くまでに 鳴き響め 安寐寝しめず 君を悩ませ 万4177 *私たちを隔てる礪波山を飛び越え、明け方も夕方も鳴き声を響かせて池主さんを悩ませてください。 我れのみ聞けば寂しもほととぎす 丹生の山辺にい行き鳴かにも 万4178 *ひとりで聞くと寂しくなるホトトギスの鳴き声。丹生山に行って池主さんに聞こえるよう鳴いてくれ。 ほととぎす夜鳴きをしつつ我が背子を 安寐な寝しめゆめ心あれ 万4179 *ホトトギスよ、池主さんを寝かさないよう、心して夜鳴いて欲しい。 【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々: 紀 牛養/牛甘 き の うしかい ? - ? 奈良時代の貴族。764年、藤原仲麻呂の乱に連座、771年、赦免。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19