万葉集巻第十九4159-4162番歌(言とはぬ木すら)~アルケーを知りたい(1559)
▼今回は時間の流れと無常についての歌。4159番では年を重ねた存在に対する敬意。この歌に出て来る言葉の「神さび」が良い。新品もイイけど、神さびて年季が入ったのはやはり良い。
4160番は「世間は常なきもの」であることは「天地の遠い初め」からのことで昨日今日始まった話ではないと言い聞かせるフレーズで始まる。そうなんだけど、それは承知しているのだけれど、やはり変化に無常を感じるのは万葉人も現代人も同じです。
4161番ではモノを言わない木ですら変化すると言う。
4162番では変化に心を煩わせないようにしようと思ふが、物を思ってしまうと言う。もう一つのバージョンとして「嘆く日が多い」と言うのがある。
「常なきもの」に人は対処が難しいのだ。
季春三月の九日に、出挙の政に擬りて、古江の村に行く道の上にして、物花を属目する詠、幷せて興の中に作る歌
渋谿の崎を過ぎて、巌の上の樹を見る歌一首 樹の名はつまま
磯の上のつままを見れば根を延へて 深くあらし神さびにけり 万4159
*磯の上にタブノキが生えている。根を伸ばし、樹齢も長く、神々しい。
世間の無常を悲しぶる歌一首 幷せて短歌
天地の 遠き初めよ
世間は 常なきものと
語り継ぎ 流らへ来れ
天の原 振り放け見れば
照る月も 満ち欠けしけり
あしひきの 山の木末も
春されば 花咲きにほひ
秋づけば 露霜負ひて
風交り もみち散りけり
うつせみも かくのみならし
紅の 色もうつろひ
ぬばたまの 黒髪り
朝の笑み 夕変らひ
吹く風の 見えぬがごとく
行く水の 止まらぬごとく
常もなく うつろふ見れば
にはたづみ 流るる涙
留めかねつも 万4160
*吹く風、行く水のようにこの世の移ろいを見ると、涙が流れて止まらない。
言とはぬ木すら春咲き秋づけば もみち散らくは常をなみこそ 一には「常なけむとぞ」といふ 万4161
*ものを言わない樹木でも春は花を咲かせ、秋には紅葉して葉を落とすのは不変というのがないからです。
うつせみの常なき見れば世間に 心つけずて思ふ日ぞ多き 一には「嘆く日ぞ多き」といふ 万4162
*はかなくて不変というもののないので、世の中に心を煩わせないようにしようと思うけど、もの思いをする日は多いのだ。
【似顔絵サロン】藤原仲麻呂の乱に関係した人々:仲 石伴 なか の いわとも ? - 764 奈良時代の貴族。757年、藤原仲麻呂の養子。764年、藤原仲麻呂の乱では仲麻呂と行動を共にし、近江国で敗死。
〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=19
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