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アルケーを知りたい(21) レプトン l: lepton

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 ▼18回から20回まで、物質を構成する粒子でお馴染みの陽子・中性子・電子を見た。今回は電子の上位概念のレプトンに親しもう。 ▼平尾物理(平尾淳一「総合的研究 物理」旺文社、2018年)による現代の物理学についての説明は次だ(p.715)。 ・素粒子を研究する学問には、理論的な側面(素粒子物理学)と実験的な側面(高エネルギー物理学)がある。 ・高エネルギー物理学では、シンクロトロンなどの粒子加速器を利用した実験や宇宙線の観測などが行われている。 ・こうした研究によって、多数の新粒子が発見された。 ▼実験技術や観測・測定技術が向上した結果、それまで原子が陽子・中性子・電子で構成されている、と考えられていたのが、ハドロン・レプトン・ゲージ粒子で構成されている、と考え方がバージョンアップした。現代の高校生はバージョンアップした素粒子観で学ぶ。50年前の高校生は旧バージョンの原子観なので、陽子・中性子・電子をワンノブゼム扱いされるのに違和感を感じる。しかし、これは原子観を素粒子観にバージョンアップすれば問題ないことだ(と自分に言い聞かせて)。 ▼レプトンは、ハドロンと共に原子を構成する主要メンバーだ。レプトンには、電子のほかニュートリノやミュー粒子がいる。電子のことを荷電したレプトン、荷電レプトンという。電子が特別扱いしてもらっているようでちょっと嬉しい。 ▼電気的に中性のレプトンに有名なニュートリノがいる。「3つの世代」とか「6種類のフレーバー」とか怪しい言葉が見えてくる。こいつらいった何だろうか。・・・焦らず急がずちょこっとずつ進もう。 ▲レプトンの命名者、レオン・ローゼンフェルトさん。ベルギー生まれの物理学者。

アルケーを知りたい(20) 電子 e: electron

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▼電子は陽子・中性子と共に原子を構成する主要メンバー。古くから人は電子の働きの結果を観察していた。けれど、電子そのものの正体を掴めないでいた。それを陰極線管の実験で明らかにしたのがJ・J・トムソンさんだった。 ▼電子は陽子と共に原子の化学的性質を決定する粒子。そして化学反応に関わる非常に重要な粒子。 ▼電子は陽子の2000分の1の質量。なのに電荷は陽子と同量。これが不思議でならん。 ▼素粒子的に言うと、電子はレプトンの一つ。荷電レプトン。ほかにミュー粒子とニュートリノがいる。 ▼この3者は発見の時期に大きな違いがある。電子が1897年。ミュー粒子は40年後の1937年。ニュートリノはほぼ60年後の1956年。 ▼今の高校生には、レプトンという括りの中に電子たちがいる、という整理の仕方は、抵抗もなく受け入れやすいだろうか。私は後から出てきたミュー粒子などの新参者がレプトンという括りを新しく作って電子様に覆いかぶせやがって、という気持ちがないではない(ある、ということね)。 ▲electronの命名者ジョージ・ストーニーさん。 electronを 電荷の基本単位量として捉えていた。 ストーニーさんの研究は 後に続くJJトムソンさんの研究の土台になる。

アルケーを知りたい(19) 中性子 n: neutron

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▼今回は原子の構成メンバーのひとつ、中性子neutronを調べてみた。発見者のチャドウィックさんはケンブリッジ大学の博士課程でラザフォードさんに指導を受けた直弟子。学位取得後もラザフォードさんの研究助手として原子の研究を前進させた物理学者。 ▼1930-40年代の原子核研究は第二次世界大戦と重なり、研究成果が原子爆弾となって現れる。チャドウィックさんは原子核研究の先進国だったイギリスの専門家としてアメリカで進められていたマンハッタン計画に協力した。そのような歴史的なキャリアの持ち主。 ▼さて、中性子。陽子1個の水素以外の原子では、中性子と陽子が原子核(核子)を成す素粒子。陽子と比較すると、陽子より少しだけ質量が大きい。陽子は電荷があり、中性子は電荷なしの中性。 ▼陽子・中性子ともクオーク3つが結びついてできたハドロン。陽子がアップクォークが2個、ダウンクオークが1個。これに対し、中性子はダウンクオークが2個、アップクオークが1個。 これらをバリオンという呼び方をするのでアタマがこんがらがってくる。すいすい分かる高校生、すげえ。 ▼ハドロンは、強い相互作用によって結合したクォークの複合粒子(素粒子の複合体である粒子の総称。ハドロンのほか原子核、原子、分子も複合粒子)のことで、名前の由来は「強い」という意味のギリシャ語。 バリオンは、3つのクォークが構成する亜原子粒子(核子や原子を構成する粒子)のことで、名前の由来は「重い」という意味のギリシャ語。 ▲中性子を発見したジェイムス・チャドウィックさん。20代のときに第一次世界大戦を、40~50代のときに第二次世界大戦を経験した。

アルケーを知りたい(18) 陽子 p : proton

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▼前回(17)で素粒子の構成メンバーを確認した。そのとき新しい名称がたくさん登場したので、まず今までお付き合いのある陽子から調べていく。 ▼陽子、またの名をプロトンprotonと言い、記号はp。発見者はラザフォードさん。50才くらいのときの発見だ。Nを壊してたらHの原子核を得た。Hの原子核はそのまま陽子だ。陽子1個、電子1個、中性子なしの原子Hは、なんだかとても面白い存在と思う。 ▼新しい情報は、陽子は3つのクオークから出来ている、という話。アルケーを突き詰めた!と思ったらまだ先があったわけだ。クオークはアップとダウンの2種類があって、陽子はアップ2個ダウン1個から成る。 ▼今日は陽子が3つのクオークから出来ていた、ということが分かった。ラザフォードさんが陽子を見つけたときに「あ、これはクオーク3つから出来ているぞ」と気づいた訳ではない。40年とかの年月をかけて多くの物理学者が研究と実験を重ねた結果だ。クオークと名付けられたのが1963年。ラザフォードさんが死去して26年後の話だ。 ▲陽子を発見したアーネスト・ラザフォードさん。42才のときキャヴェンディッシュ研究所の所長になる。  

アルケーを知りたい(17)素粒子 高校物理の説明#1

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▼原子は陽子・中性子・電子で構成されている、というのが「アルケーを知りたい」16回までの到達点。相当な情報量なので、このまま進むとアタマがパンクしそう。で、いったん休憩。 ▼高校物理では原子核を構成する素粒子の世界へと進むので、ちょっと覗いてみる。原子の構成のときと同じく素粒子の構成メンバーを表にまとめた。素粒子の分類で面白いのは最初に「物質を構成する粒子」と「力を媒介する粒子」という分け方をしているところ。 ▼物質を構成する粒子は、ハドロンとレプトンに分かれる。ハドロンはさらにバリオンとメゾンに分かれる。バリオンには陽子と中性子があり、メゾンにはパイ中間子がある。レプトンは電子、ミュー粒子、ニュートリノがある。 ▼力を媒介する粒子は3種類で、光子、ウィークボゾン、グルーオンだ。 ▼名前を見て、ああ、このヒトはこういう性格なんだ、というイメージが湧くようになるまで一つずつ調べてみる必要がある。でも手ごわい予感ばりばりあります。 ▲水素Hを分離・発見したヘンリー・キャヴェンディッシュさん。イギリスの化学・物理学者。ケンブリッジ大学キャヴェンディッシュ研究所はその名前に因んで命名された。

アルケーを知りたい(16)水素原子の陽子と電子のイメージ

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▼原子のうちで一番シンプルな水素原子の絵で原子の状態をイメージしてみる。 ▼陽子が1個、電子が1個で原子を作ると水素(軽水素)になる。水素に占める軽水素のシェアは99.985%と圧倒的だ。 ▼陽子1個と中性子1個、電子1個で原子を作ると重水素になる。水素に占める重水素のシェアは0.015%だ。 ▼陽子1個と中性子2個、電子1個で原子を作ると三重水素になる。これは極微量。 ▼電子の軌跡を蓄積すると球体になる。これを原子殻という。原子殻が原子のサイズになる。 ▼教科書や参考書の原子のモデル図では原子核と電子が余りに大きなサイズにデフォルメされている。下のイメージ図では、ほんの少しリアルなサイズに近づけた。リアルに近づくほど原子核も電子も見えなくなるので、ぎりぎりのところで止めている。しかし、これでも極めてデフォルメしていて、教科書や参考書と五十歩百歩といったところに過ぎない。 ▼原子を構成する原子核も電子もメチャ小さい。結果、原子は真空の球体になる。真空がいくら集まっても真空だろう、とふつうは思う。しかし、なぜか、水素になったり金になったりする。不思議でならん。 ▼陽子と電子は同じ量の電気を持っている。陽子や電子が持っている電気量を電気素量という。陽子はプラス、電子はマイナスの電気量を持つ。併せると中性になる。 ▼表に電気量の単位としてC(クーロン)が出ている。1Cは1秒間に1アンペアの電流が運ぶ電気量、と定められている。何ボルトなのか分からんけど。 ▲電荷の単位C(Coulomb)はシャルル・ド・クーロンさんの名前に因んで命名された。クーロンさんはフランス軍の技術将校、物理学者、土木技術者。

アルケーを知りたい(15)原子番号と質量数#2

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▼元素記号の左下に原子番号添え、左上に質量数を添えて表記することは分かった。今回はそれに何の意味があるんか?を確認した。 ▼質量数は、いろいろある原子の質量の大小を比較するためにある、らしい。例えばLiとNだけ見てもどっちがでかいのかぱっと分からないけど、Liが3でNが7と分かれば、すぐ分かる。なるほど、それは便利。ついでに質量数を表す記号がAなので(Aの由来は分からんが)表に付け足しておいた。Wikipediaを見ると陽子がprotonのp、中性子が neutronの nという。ということは、A=pの数+nの数という関係だね。 ▼原子番号は、原子や元素の種類を区分するためにある、という。原子番号はそのまんま陽子の数のことなので、陽子の数が元素・原子の種類を決める、という話だ。つまり、世界中の物質の根源が原子核の中の陽子の数で決まる、という話。なんかクラクラしてきそう。 ▼気を取り直します。原子番号はZという記号で表す。この記号を使うとA=pの数+nの数という関係は、A=Z+nとすっきり表現できる。Wikipediaによるとドイツ語 Zahl の頭文字とのこと。 ▼陽子はプラスの電気を帯びているので原子核はプラス。その分、電子がマイナスの電気を帯びているので原子としてはプラマイ0。そういう話なんでしょうけど、質量で見れば陽子の1840分の1しかない電子が、なぜプラマイ0にできるだけの電気の量を持てるのだろう?不思議でならん。 ▲ヘリウムHeを発見、命名したノーマン・ロッキヤーさん。イギリスの天文学者。

アルケーを知りたい(14)原子番号と質量数#1

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 ▼元素記号が左に小さく書かれた数字を伴って現れると、なんだかとても難しそうに見える。だからといってスルーしてばかりもいられないので、今回はその数字の意味について調べてみた。 ▼結論は表のとおり。上の数字が質量数、下の数字が原子番号。原子番号は原子核の中の陽子の数。質量数は原子番号を2倍したもの。 ▼原子番号は生徒番号や学籍番号のようなもので、その元素を特定する番号。原子番号1は水素。原子番号2がヘリウムと決まっていてゆるがないもの。 ▼原子番号は原子核の中にある陽子の数と同じ。水素は陽子が1個、ヘリウムは陽子が2個、ということが原子番号から分かる、という塩梅だ。 ▼質量数は、陽子の数と中性子の数を足したもの。しかし、これは原則であって、中性子の数によって質量数が変わる。こういう話が出てくると「ん?」となる。いっぺんにたくさんやると分からなくなるので先は急がない。 ▼卜部化学には原子番号1から20まで「水兵リーベ」の覚え方が載っている。これから覚える人がいると思うと、伝統が継承されている感じがして嬉しい。今、書いてみるとClから先がボロボロだった(笑)。 ▲夢で周期表を見る。目覚めてすぐ書き止め学会で発表したメンデレーエフさん。ロシアの化学者。

アルケーを知りたい(13)原子核と電子の位置関係

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 ▼原子の状態を2通りの方法でイメージしよう。一つ目は、原子核を「自分の指の第一関節から先くらいの大きさ」としたとき、電子はどれくらい先の所を回っているか、というアプローチ。答えは50m先だ。指先を中心に半径50mのところを電子が回っている、という話。 ▼二つ目は、A4サイズの紙いっぱいに円を描いて、それを電子殻つまり電子が回っているところと見たとき、原子核はどれくらいの大きさになるか、というアプローチ。答えは1mmの50分の1だ。・・・見えんわ。 ▼原子核と電子の間は真空(中学理科)という。A4いっぱいの円の中の見えない点が原子核、その2000分の1の質量の電子。ということは原子をモデルで捉えようとすると、ほぼ何もない、ということになる。今まで見てきた原子モデルは超誇張している。同時に、何か落ち着かない気持ちになる。  ▼アルケーが原子で、その実体は真空でスカスカというわけ? でもこれは、ちょっと腑に落ちなくないですか。で、一日考えた。その結果、物質的にはほとんど何もないように見えるけど、人が検出できない何かがある、と仮定して気持ちを落ち着かせることにした。 ▼ほぼ何もない真空の原子が集まって分子や物質が構成され、世界が構成されているとは考えにくい。電子は陽子の2000分の1の質量しかないのに、同じ量の電荷を持つ、という話も物質的に考えるといかにもアンバランスだ。どうも、世界が小さい粒で構成されていると考えていると行き詰ってしまう。目に見えない何かがあるんだろう。 ▲古代ギリシャ哲学者ソクラテスさんはアルケー(物質の根源)を「 アトモン~不可分のもの 」とした。

アルケーを知りたい(12)原子のサイズを感じる

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 ▼原子の大きさ(直系)は10のマイナス10乗である。これを感覚的に把握するため、いくつかの例と比較したのが下の表である。 ▼最初に挙げたのはモデル的な原子で、そのサイズを1とする。金原子はその5倍だ。ウィキペディアで調べると0.288nmと記載されている。ここでは卜部化学に出ている0.5nmで計算した。比較のために金を取り上げたのは、私がゴールド好きだから(笑)、それと、ラザフォードさんが実験に金箔を使ったから。 ▼次がCPUのプロセス(回路の線幅)のサイズ。最先端の数字を見つけたので持ってきた。AppleはMac用CPUで5nmの製品を出しており、次は3nmという話。モデルにした原子の30倍。金の6倍。CPUの回路の線は、金原子を6個並べた幅、ということ。すごくねえか。 ▼コロナやインフルエンザウィルスは100nm。原子モデルの1000倍、金原子の200倍。CPUの線幅で編んだマスクだと完ぺきに防げる。あるいはCPUの線幅の網にウィルスを通すと破壊できる。 ▲CPUの世界的メーカー、インテルの設立者のひとりゴードン・ムーアさん。集積回路の微細化技術が進むにつれ集積率が一定期間ごとに倍になるというムーアの法則を提唱。

アルケーを知りたい(11)高校物理の原子#3

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 ▼素粒子は電気的な性質を持っているので、今回はそこを確かめる。図は平尾物理の421頁を参考にして作成した。 ▼電気的な現象の根源を表すのが「電荷」。電荷がもたらす電気的な効果を示す量を電荷量とか電気量という。電気量の単位はC(クーロン)。1Cは、1秒間で1アンペア(A)の電流が運ぶ電気量。素粒子で電荷を持つのは陽子と電子。共に同じ量の電荷。陽子はプラス、電子はマイナス。 ▼質量を比較。電子の質量÷陽子の質量*100で計算すると、0.054%に過ぎないことがわかる。陽子の質量÷電子の質量で計算すると、今まで何度かお目にかかった1836倍。 ▼約2000倍も質量が違うのに、電気量は同じ! これはどういうことだろう? 保留にして先に進もう。 ▲古代ギリシャ哲学者のアリストテレスさんはアルケー(物質の根源)を「火・土・空気・水の四元素に加えて 温・冷、乾・湿」 とした。

アルケーを知りたい(10)物質・純物質・単体

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 ▼この10回で原子の概要が少しだけ分かってきた(同時に分からないことも出てきた)。いまの中学生は原子を構成している素粒子の名前も学んでいるんだ、ということに驚いた。さらに高校生で物理・化学を選択すると、量子力学まで学ぶことも参考書で分かった。 ▼大人の私が小中高生に「しっかり勉強するんだよ」というのは簡単。だけど、これから自分が受験に向けて物理・化学をやったら、すぐ何が何だか分からなくなるな、ということはよく分かった。 ▼第2回学力向上アプリコンテストのスタッフで電通大プログラミング教室講師の志田さん(電通大B4)は、高校時代は物理と化学を取っていましたと楽しそうに語っていた。一目置いてます。 ▼いまこのブログではアルケーを知りたくて、原子に焦点を当てて、中学高校の物理・化学の参考書やWikipediaを見ているところだ。今回は、世界の物質を混合物と純物質の二つに分類する、という大胆な方法を見た。世界を何かの軸で二つに分類するって、すごくないか。 ▼さらに純物質を化合物と単体に分ける、という方法を知った。「分ける」イコール「分かる」という話のとおり、分けると分かった気になるから不思議だ。それにしても、世界の物質を混合物・純物質・化合物・単体に分けるやり方が洗練を重ね、ついに教科書に載るまでにどれくらいの歴史的な時間がかかっただろうか? 100年、500年、1000年? ギリシャ哲学の時代から見れば2500年。半端ない。 ▼現役の中高生は、歴史に思いを馳せ過ぎると授業の進度と合わなくなる危険があるので、ほどほどに(笑)。学校を出たあとなら、なんぼでも好きなだけ調べられるから、楽しみにするが良いぞ。 ▲古代ギリシャ哲学者のエンペドクレスさんはアルケー(物質の根源)を「火・土・空気・水」の四元素とした。

アルケーを知りたい(9) 分子・原子・元素・元素記号

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 ▼分子は物質を砕いて砕いてこれ以上小さくできない、というところまで小さくした物質の粒子。水分子だったら、水の性質を保っている。原子は分子をさらに砕いたもの。水分子を分解すると酸素原子と水素原子に分かれる。分子と原子の違いはなんとなく分かる。 ▼原子と元素の違い。これが分かりにくい。 元素記号を原子記号と言うこともある(違いがぼやけるので困る)。どう違うのだろうと、 はっきりさせたくて下の表を作ってみた。しかし、これだけだとはっきり分かったと言えないのでひとまず保留にしておこう。 ▲古代ギリシャ哲学者のレウキッポスさんはアルケー(物質の根源)を「アトム」とした。 レウキッポスさんは デモクリトスさんの師匠。

アルケーを知りたい(8)中・高校化学の原子まとめ

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▼世界を構成する物質で一番小さい原子について、中高生はどんな情報を持つのか、この3,4回にわたって物理や化学の参考書を調べてみた。いままでの表をひとつに整理したのが下の表だ。 ▼まず原子は原子核と電子から成る。電子の質量は原子核の2000分の1。電気的にマイナスの性質。 ▼次に原子核は陽子と中性子から成る。陽子と中性子の違いは、電気的に陽子はプラス、中性子は電気的な性質を持たない。 ▼陽子・中性子・電子など原子を構成するメンバーをまとめて素粒子という。 ▼電子殻は、原子核の周りを回る電子の軌跡を球に見立てたもの。 ▼表にまとめてはみたものの、謎だらけだ。「電子は原子核の2000分の1の質量しかないのに、電気的にはプラスの陽子を中性にするマイナスの電気量を持つ。なんでそんなことができるのだろう?」とか「原子核と電子の間はどういうことになってるの?」とか「そもそも電子が原子核の周りをなぜ回るの?」とか。ま、そういう謎はいったん脇に置く。原子を知るのに必要な概念がまだまだたくさんあるので、参考書からひとつずつ確かめていこう。 ▲古代ギリシャ哲学者のアナクサゴラスさんはアルケー(物質の根源)を「スペルマタ(種子)」とした。

アルケーを知りたい(7)中学化学の原子

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 ▼中学の化学分野で原子の構造がどのように説明されているか、確認しよう。旺文社の「中学総合的研究」の「化学変化とイオン」の項に詳しい説明がある。内容を下の表にまとめてみた。 ▼高校の物理、化学と比べても負けてないくらいの情報がある。むしろアタマに入りやすい。しかも「電子殻(でんしかく)」まで取り上げて説明している。電子殻は原子核の周りを回る電子が描く軌道を球(断面にすると円)のイメージでモデル化したもの。 ▼いうなら中学での原子の理解は、古典物理の到達点まで行っている。マックス・プランクさんが古典物理では説明がつかない現象の説明に取り組んだことで始まった新しい物理学、素粒子の振る舞いを探るための物理学に進むのが高校の物理。高校物理、すげえ。 ▼下の表はイオンの項での説明なので、陽子がプラスの電気を帯び、電子がマイナスの電気を帯びていると言っている。 ▲古代ギリシャ哲学者のピタゴラスさんはアルケー(物質の根源)を「数」とした。

アルケーを知りたい(6)高校化学の原子

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 ▼卜部化学で高校での原子の説明を確認する。昨日の物理#2との違いは、原子核(陽子と中性子)と電子を「素粒子」と呼んでいること。おかげで素粒子とは、陽子・中性子・電子らをまとめた言葉であることが分かる。卜部化学ではこれらを「原子を構成する素粒子」と表現している。 ▼これ以外の違いは、単位が長さがメートルではなくセンチで、質量がキログラムではなくグラムで示されていること。電子の質量が原子核の1837分の1ではなく1840分の1であること。 ▼10のマイナス9乗がナノ(n)。1nmは10のマイナス9乗メートル (m) 。原子の直系は約10のマイナス10乗メートルなので、0.1nm。国立感染症研究所によるとコロナウイルスは直径約100nmの球形だから、原子の1,000倍のサイズだ。だからといって、大きいんだか小さいんだか分からん(笑)。 ▼コンピュータのCPUの線幅が10nm前後なので、CPUは原子のサイズの100倍の幅で配線が加工されている、ということになる。これはちょっとすごい感じがする。ただ、これはあくまで原子のサイズの話で、素粒子のサイズになると話が違ってくる。それでまだ大丈夫とかいって安心するとか、そんな話じゃないんだけど (笑) 。 ▲古代ギリシャ哲学者のアナクシマンドロスさんはアルケー(物質の根源)を「無限なるもの」とした。

アルケーを知りたい(5)高校物理の原子#2

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 ▼平尾淳一著「総合的研究 物理」は1頁ごと、1段落ごとの情報密度が高い。一度に理解するのは私の理解力と記憶力では無理なので、ちょっとずつ情報を取り入れながら前進する。今回は前回の原子の構成要素にサイズと質量などの情報を加えた。 ▼原子と原子核のサイズを比べると、原子核を1とすると、原子はその1~10万倍だ。逆に言うと原子の中のほんの一点が原子核だ。原子のイメージは原子核の周りを電子が回っているというモデルだ。実際は、原子核は見えないくらいの一点なので、教科書や参考書で目にする原子モデルはめちゃ誇張している。 ▼次に原子と原子核の質量を比べる。原子の質量=原子核の質量+電子の質量、だ。電子の質量は原子核の質量の1837分の1(計算すると0.027%になった)に過ぎないので無視する。すると、原子の質量=原子核の質量、となる。原子核は陽子と中性子から成っているので、原子核の質量=陽子の質量+中性子の質量、だ。中性子のほうがわずかに重いものの、両者はほぼ等しいとして、差は無視。 ▼これで、陽子、中性子、電子のサイズと質量、そして位置関係がだいたい分かった。 ▲ 古代ギリシャ哲学者のデモクリトスさんは アルケー ( 物質の根源 )を「アトム」とした。

アルケーを知りたい(4) 高校物理の原子#1

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 ▼中学の理科に比べると高校の物理は格段に難しくなる。高校の物理で原子はどんなふうに説明されているのかを平尾淳一著「総合的研究 物理」で見ると、p.715に「物質の構成要素は、我々の自然理解の進化とも関連しながら、階層的に理解されている」と説明があるので、下の表のように整理した。 ▼この表で言いたいことのは、分子を細かく砕くと原子になる、原子は原子核と電子からなる、原子核は陽子と中性子からなる、という階層構造になっている、ということ。 ▼原子の大きさは、10のマイナス8乗センチ。1億分の1センチ。原子核の大きさは原子の大きさの1万分の1。原子の中のほんの1点に原子核がある。ということは、原子全体はスカスカの空間というイメージ。 ▼陽子と中性子の重さは同じ。電子の1837倍の重さがある。原子1個の重さは陽子と中性子の重さの合計。このあたりは古代ギリシャの哲学者は知らなかった情報だ。 ▲ 古代ギリシャ哲学者のヘラクレイトスさんは アルケー ( 物質の根源 )を「火」とした。

アルケーを知りたい(3) 中学理科の原子

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▼辞書の次は参考書で意味調べ。中学の物理分野と化学分野で原子はどのように説明されているのか、書店で並んでいる参考書でも分厚いと説明も詳しいだろうと踏んで確認した。 「中学総合的研究、理科、三訂版」旺文社、2013年。 ▼物理分野では原子は「 物質をつくる小さな粒子 」「 原子核と電子 」というキーワードで説明されている。化学分野では「分子を分解したもの」「 化学的にそれ以上分割できない微粒子 」「 物質を構成する粒子 」「水分子は水素原子と酸素原子からなる」と説明されている。 ▼世界の物質を細かく砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて砕いて・・・微粒子にすると原子になる、というイメージだ。水分子を砕いて水素原子と酸素原子にするともはや水の性質は持っていない。 古代ギリシャ哲学者のタレスは万物の根源を水と考えていたので、我われがタレスに会ったら「水の粒子はさらに水素原子と酸素原子に分けられるんです」と説明できる。それを聞いたタレスさんが質問してくるとヤバくなりそうだけど(笑)。 ▼そして原子は原子核があって、その周りを電子がいる、という構造になっているというところまで、中学の理科で原子について把握できる。 ▲ 古代ギリシャ哲学者のアナクシメネスさんは アルケー ( 物質の根源 )を「空気」とした。

アルケーを知りたい(2) atom

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  ▼「原子って何ですか?」と聞かれたとき一刀両断で答えられるまで理解したい。原子は、物質のなりたちの元になっているはずのものなので、その意味を正しく知りたい。という気持ちから前回は広辞苑で調べた。今回は英英辞典のOALDとLONGMANで調べる。 ▼OALDの説明文を解釈すると 原子は「この世に存在している化学元素で一番ちっこいやつ」 ということになる。私は、辞書の説明はズバリ説明して「そうか!」と分からせて欲しい派。だけどここでは element にchemicalという形容詞がついている。困り惑う、つまり困惑する。 ▼オリジナルの説明文から chemical を取って the smallest particle of an element that can exist ではダメなのですか?という気持ちになる。化学寄りの説明になっているようですけど、それで大丈夫なんですか的な気持ち、というか。しかし、chemicalをつけなければならない理由があるのだろうから、それが分かるまで修行を続けよう。 ▼広辞苑で原子の説明に元素という語が出てきたのと同じようにOALDでもatomの説明にelementが出てくる。ある用語の説明のために新しい用語が出てくる。その新しい用語の意味が分からないから調べるとまた別の新たな用語が出てくる。分からない連鎖なんだけど、不思議なもので、それを何回も繰り返しているとだんだんと最初に調べた用語の意味する姿が浮かび上がってくることがある。 ▼そんな悠長なことをやっている暇がない受験生は、用語と意味をひとまとまりで覚えて試験に備えてください。 ▲古代ギリシャ哲学者のクセノファネスさんは アルケー ( 物質の根源 ) を「土」とした。

アルケーを知りたい(1) 原子

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▼今回から、ものの成り立ちの根源(ギリシャ哲学ではアルケーと言います。この用語は高校倫理で出て来ます)に関する知識を拡げるシリーズを始めます。情報源としては、辞書、中学理科、高校の物理・化学、Wikipedia、YouTubeを使う予定。 ▼中学理科は義務教育の教科。一生の教養の土台だ。高校の理科になると中学より各段に難しくなる。もっとも、ここでは ものの成り立ちについての情報をアバウトに知るのが目的。だから、大学入試向けのシリアスな勉強としてではなく、知りたいことのイメージがだいたい掴めたかも、という気がするまで調べるアプローチで行きます。 ▼最初のテーマは原子。まず言葉の意味調べから入る。広辞苑第7版を引いてみよう 。 原子とは「物質を構成する単位の一つ」 だと書いてある。 この説明では、物質を構成する単位がいくつかあって、原子はそのワンノブゼムということなので、原子の他にも何かあるようだ。けど、それが何かは書いてないので分からない。 ▼次に「各 元素 のそれぞれの特性を失わない範囲で到達し得る最小の微粒子」という説明がある。この中に「元素」という言葉が出てくる。元素を広辞苑で引くと「原子の種類」であり、具体的には「金・銀・銅ほか」だという。「 原子番号の等しい原子は同じ元素である」という説明もある。「原子番号」の意味が分からないと、この説明を見ても?になりそう。調べることが増えていくのは楽しい。 ▲古代ギリシャ哲学者のタレスさんは アルケー ( 物質の根源 ) を「水」とした。