熱の捉え方の歴史的な変遷:アルケーを知りたい(459)

今回の話題は(A)物理学。

▼今回は私のように熱が難しいと感じている方へ。熱をどう捉えるかについて古来からの格闘を知ると、教科書を読んでもなかなか理解できないのも無理はないと安心できます。

古代 「熱は光や火と同じもの」「火・空気・水・土が四大元素だ(アリストテレスさん)」「火は原子だ(デモクリトスさん):火はアルケーのひとつと捉えられていた時代

17世紀 「熱は何らかの物質である:熱物質説(ガリレオさんら)」「熱は運動が原因である:熱の運動説(ベーコンさんら)」

18世紀 「燃焼はフロギストン(燃素)によって起こる:フロギストン説(ゲオルク・エルンスト・シュタールさん)」「熱は「火の物質」が通常の物質にぶつかり、その結果通常の物質が動くことによって起きる:熱物質説」(ヘルマン・ブールハーフェさん)「熱物質説の立場から熱容量や潜熱の概念を生み出し「熱」と「温度」を区別(ジョセフ・ブラックさん)」

ラヴォアジェさん それまで同一視されていた光・火・熱を分離し、光は光素、火は酸素、熱は熱素によるもの、と捉えた。「モノが燃えるのはフロギストンではなく、酸素の働きによるものである」「酸素は、酸素の基と火の物質(カロリック)から成る」

▼19世紀 マイヤーさん、ジュールさん、ヘルムホルツさんらによる熱力学第一法則(エネルギー保存の法則)がカロリック説を退ける。熱が分子の運動であるとする熱の分子運動論が熱物質説を退ける

▼今回の人物 熱と温度を区別した物理学者。
ジョゼフ・ブラック Joseph Black、1728 - 1799 スコットランドの物理学者。教育▽グラスゴー大学でリベラル・アーツ、エディンバラ大学で医学 実績▽22歳のとき二酸化炭素を発見、33歳のとき潜熱や熱容量の概念を確立 人脈▽ウィリアム・カレン(大学時代の師匠。医師。冷凍技術のパイオニア)、ジェームズ・ワット(29歳で出会い友達、相談相手)、ルナ―・ソサイエティのメンバー

〔参考〕
有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。
平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。
https://en.wikipedia.org/wiki/Joseph_Black

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