在原業平の歌~アルケーを知りたい(1043)

在原業平は百人一首17番歌「ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」の作者。この歌の意味は、龍田川を唐紅の色に染めるとは神代の昔から聞いたことがない。初見では意味が分からなかった。
▼でも業平の歌は分かりやすくて好きだ。気になるのは紀貫之の業平評。「月やあらぬ春や昔の春ならぬ  我が身ひとつはもとの身にして」と「おほかたは月をもめでじこれぞこの つもれば人の老いとなるもの」を例に挙げて「その心余りて言葉足らず。しぼめる花の色なくて、にほひ残れるがごとし」と言っている。
▼そうだなあと思えるし、そうかなあとも思える。両方とも好きな歌なんだけど。

▼在原 業平 ありわらの なりひら
825(天長2)年 - 880(元慶4)年7月9日 55歳。
 平安初期~前期の貴族・歌人。三十六歌仙の一人。阿保親王の五男。在原行平(16番歌)の弟。兄同様、鷹狩の名手。『伊勢物語』は、業平の物語。
紀貫之の業平評:その心余りて言葉足らず。しぼめる花の色なくて、にほひ残れるがごとし。(その例として挙げられたのが★の歌。私はとても良い歌だと思いますけど。)
『三代実録』の業平評:体貌閑麗、放縦不拘、略無才覚、善作倭歌。

847(22) 蔵人。879(54) 蔵人頭。880(55) 兼美濃権守。

▼在原業平の和歌と*勝手に解釈
なぎさの院にて桜を見てよめる
世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
*この世に最初から桜がなければ、春になっても心は長閑だったろうに。

月やあらぬ春や昔の春ならぬ  我が身ひとつはもとの身にして
*月は月でなくなったのか、春は昔の春ではないのか。私独りだけが変わっていないのか。

題しらず
ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは 秋風吹くと雁に告げこせ
*蛍よ、雲の上まで飛んでいくのなら、秋風が吹いているよと雁に伝えてくれ。

二条の后の春宮のみやす所と申しける時に、御屏風に龍田河に紅葉流れたるかたを描けりけるを題にてよめる
ちはやぶる神世もきかず龍田河 唐紅に水くくるとは
*ちはやぶる神の世でも聞いたことがない、龍田川の水を唐紅の色に染めあげるとは。

名にし負はばいざ言問はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと
*都鳥という名を持つ鳥にお尋ねしよう、私を思い出してくれる人は都にいるかいないか。

あづまの方にまかりけるに、浅間のたけに煙のたつを見てよめる
信濃なる浅間の嶽に立つけぶり をちこち人びとの見やはとがめぬ
*信濃にある浅間山から噴煙が立ちのぼっている。周りの人はこれを見てとがめたりしないのだろうか。

堀川の大臣(藤原基経)の四十賀、九条の家にてしける時によめる
桜花散りかひくもれ老いらくの 来むといふなる道まがふがに
*桜の花よ、散り乱れよ。老いらくが来るという道が霞んで見えなくなるように。

題しらず
おほかたは月をもめでじこれぞこの つもれば人の老いとなるもの
*たいていは月を愛でることもなくなる。というのも月が積もって老いとなるものだから。

題しらず
はるる夜の星か川辺の蛍かも 我がすむかたに海人のたく火か
*晴れた夜の星か、あるいは川辺の蛍か。それとも私が住んでいる海辺で漁師が燃やす火か。

あかなくにまだきも月のかくるるか 山の端にげていれずもあらなむ
*まだ飽きてもいないのに月が見えなくなるのか。山の端が逃げて月が入れないようにすると良いのに。

おもふ所ありて、前太政大臣によせて侍りける
たのまれぬ憂き世の中を歎きつつ 日かげにおふる身を如何いかにせむ
*あてにできないこの憂き世を嘆きながら、日も当たらないまま老いてしまうこの身をどうすれば良いのだろう。

題しらず
思ふこと言はでぞただにやみぬべき 我とひとしき人しなければ
*思うことは言わずにただ口を閉ざしているのが良い。自分と同じ考えの人などいないのだから。

病してよわくなりにける時、よめる
つひにゆく道とはかねて聞きしかど 昨日けふとは思はざりしを
*最後に行く道であることはかねてから聞いていた。それにしても昨日今日の話になるとは思ってなかった。

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〔参考〕
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%A8%E5%8E%9F%E6%A5%AD%E5%B9%B3
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/narihira.html

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