大伴旅人の万葉集965-968番歌~アルケーを知りたい(1122)

▼今回の歌は別れの歌。「別れの易きことを嗟(なげ)き、その会ひの難きことを歎(なげ)く」、「恨ムル所、別ルルコトハ易ク、会フコトハ難シ」の歌。良き。

 冬の十二月に、大宰帥大伴卿、京に上る時に、娘子が作る歌二首
おほならばかもかもせむを畏みと 振りたき袖を忍びてあるかも 万965
*普通のお方でしたらあれこれできましょうが、貴方様は畏れ多い方ですから、お別れに振りたい袖も振らずに我慢しています。

大和道は雲隠りたりしかれども 我が振る袖をなめしと思ふな 万966
*大和への道はるか遠くに続いていきます。私が我慢できずに袖を振っても生意気だと思わないでください。

 右は、大宰帥大伴卿、大納言を兼任し、京に向ひて道に上る。
この日に、馬を水城に駐めて、府家を顧み望む。
時に、卿を送る府吏の中に、遊行女婦あり、その字を児島といふ。
ここに、娘子、この別れの易きことを傷み、その会ひの難きことを嘆き、涕を拭ひて自ら袖を振る歌を吟ふ。

 大納言大伴卿が和ふる歌二首
大和道の吉備の児島を過ぎて行かば 筑紫の児島思ほえむかも 万967
*大和道の吉備にある児島を通り過ぎる時、ここ筑紫の児島を思い出すことでしょうね。

ますらをと思へる我れや 水茎の水城の上に涙拭はむ 万968
*自分では自分のことをますらをと思っているのですが、水茎の水城の上で別れの涙を拭っていますよ。

【似顔絵サロン】旅人(665-731)の同時代人。テウデリク3世 Theuderic III 654 - 691 37歳 メロヴィング朝の8代目の国王。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/tabito2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%97%85%E4%BA%BA

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