万葉集巻第六971‐972番歌(千万の軍なりとも)~アルケーを知りたい(1306)

▼節度使とは軍の司令官のような役職。732年、藤原四兄弟の一人、宇合が節度使として九州に派遣されるとき、高橋連虫麻呂帰還を祈って勢いをつける歌。

 四年壬申に、藤原宇合卿、西海道の節度使に遣はさゆる時に、高橋連虫麻呂が作る歌一首 幷せて短歌
白雲の 竜田の山の 
露霜に 色づく時に 
うち越えて 旅行く君は 
五百重山 い行きさくみ 
敵まもる 筑紫に至り 
山のそき 野のそき見よと 
伴の部を 班ち遣はし 
山彦の 答へむ極み 
たにぐくの さ渡る極み 
国形を 見したまひて 
冬こもり 春さりゆかば 
飛ぶ鳥の 早く来まさね 
竜田道の 岡辺の道に 
丹つつじの にほはむ時の 
桜花 咲きなむ時に 
山たづの 迎へ参ゐ出む 
君が来まさば 万971
*桜の花が咲く時期、貴方様がお帰りになるときお迎えに参上いたします。

 反歌一首
千万の軍なりとも言挙げせず 取りて来ぬべき士とぞ思ふ 万972
*敵が千万の軍隊であろうと余計なことは言わずに討ち取って来るのが武人だと思います。
 右は、補任の文に検すに、「八月の十七日に、東山・山陰・西海の節度使を任ず」と。

【似顔絵サロン】高橋 虫麻呂 たかはし の むしまろ ? - ? 奈良時代の歌人。物部氏の一族。














藤原 宇合 ふじわら の うまかい 694年 - 737年 奈良時代の公卿。藤原不比等の三男。藤原四兄弟の三男。藤原式家の祖。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=6

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