万葉集巻第八1547‐1550番歌(咲く花もをそろはうとし)~アルケーを知りたい(1394)

▼1548を見ると、早いよりも遅めでも良いのだ、という気持ちになる。1550を見ると、対比の妙が大事だ、という気持ちになる。目の前と遠くという距離の対比、視覚と聴覚という感覚の対比。

 藤原朝臣八束が歌一首
さを鹿の萩に貫き置ける露の白玉 あふさわに誰れの人かも手に巻かむちふ 万1547
*雄鹿が萩の枝に貫き通して置いた露の白玉。これを軽々しく誰が手に巻こうと言うのか。

 大伴坂上郎女が晩萩の歌一首
咲く花もをそろはうとし おくてなる長き心になほ及かず 万1548
*萩の花は早咲きよりも、後から咲く気長な心には及びません。

 典鋳正紀朝臣鹿人、衛門大尉大伴宿禰稲公が跡見の庄に至りて作る歌一首
射目立てて跡見の岡辺のなでしこの花 ふさ手折り我れは持ちて行く奈良人のため 万1549
*跡見の岡辺に咲く撫子の花。房を手折って参りましょう、奈良の人への土産として。

 湯原王が鳴鹿の歌一首
秋萩の散りの乱ひに呼びたてて 鳴くなる鹿の声の遥けさ 万1550
*目の前では秋萩の花が散り乱れています。遠くから鹿の鳴き声が聞こえてきます。

【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:智尊 ちそん ? - 672天武天皇元年8月20日 飛鳥時代の人物。渡来人。672年の壬申の乱で大友皇子側の将。瀬田の戦いで戦死。















藤原 真楯 ふじわら の またて 初名は八束 やつか 715 - 766 奈良時代の公卿。藤原北家の祖・藤原房前の三男。山上憶良と交流。















紀 鹿人 き の かひと ? - ? 奈良時代の官人・歌人。















大伴 稲公 おおとも の いなきみ ? - ? 奈良時代の貴族。父親は大伴安麻呂。旅人の弟、宿奈麻呂の兄。















湯原王 ゆはらおおきみ ? - ? 奈良時代の皇族・歌人。天智天皇の孫。志貴皇子の子。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8

コメント

このブログの人気の投稿

山上憶良の沈痾自哀文第五段~アルケーを知りたい(1145)

万葉集巻第二147‐149番歌(天の原振り放け見れば大君の)~アルケーを知りたい(1266)

万葉集巻22番歌(常にもがもな常処女)~アルケーを知りたい(1242)