万葉集巻第八1551‐1554番歌(夕月夜心もしのに)~アルケーを知りたい(1395)

▼時雨と紅葉、露とコオロギ、組合せの良き。1553の「あまねく色づきにけり」に答える1554の「散りか過ぎなむ」はどう解釈すると良いのだろう。せっかく色づいたよ、と言っているのだから、散ってしまうのが心配、くらいの答えだと良いのかも。

 市原王が歌一首
時待ちて降りししぐれの雨やみぬ 明けむ朝か山のもみたむ 万1551
*時を待ったように時雨がやみました。明日の朝は山が紅葉するでしょう。
                                                                              
 湯原王が蟋蟀の歌一首
夕月夜心もしのに白露の 置くこの庭にこほろぎ鳴くも 万1552
*夕月の夜、心がしおれる時、露のが降りた庭でコオロギが鳴いています。

 衛門大尉大伴宿禰稲公が歌一首
しぐれの雨間なくし降れば御笠山 木末あまねく色づきにけり 万1553
*休みなく降った時雨のおかげで御笠山の木々はすべて紅葉しました。

 大伴家持が和ふる歌一首
大君の御笠の山の黄葉は 今日のしぐれに散りか過ぎなむ 万1554
*大君の御笠という名の御笠山の黄葉は、今日の時雨で散ってしまいそうです。

【似顔絵サロン】同時代の乱、672年の壬申の乱の関係者:田辺 小隅 たなべ の おすみ ? - ? 飛鳥時代の人物。672年の壬申の乱では大友皇子側。倉歴道を守っていた田中足麻呂に夜襲をかけて敗走させる。















市原王 いちはらおう 719 - ? 奈良時代の皇族。安貴王の子。大伴家持と交流。















湯原王 ゆはらおおきみ ? - ? 奈良時代の皇族・歌人。天智天皇の孫。志貴皇子の子。















大伴 稲公 おおとも の いなきみ ? - ? 奈良時代の貴族。父親は大伴安麻呂。旅人の弟、宿奈麻呂の兄。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8

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