万葉集巻第八1555‐1559番歌(秋立ちて幾日もあらねば)~アルケーを知りたい(1396)

▼万葉の時代の人は寒さ耐性が今の人よりも強かったに違いない、と思ふ。今は暖房もあり、服も防寒と保温性も高いおかげで助かるわーと思ふ。1558に「思ふどち」という大好きキーワードがあって、いい味出している。

 安貴王が歌一首
秋立ちて幾日もあらねばこの寝ぬる 朝明の風は手本寒しも 万1555
*立秋を過ぎて幾日も経ってないのに、目を覚ますと朝、風で袖口が寒いです。

 忌部首黒麻呂が歌一首
秋田刈る仮廬もいまだ壊たねば 雁が音寒し霜も置きぬがに 万1556
*秋の稲刈り用の小屋を撤去しないうちから、雁が寒々しく鳴いて霜が下りそうです。

 故郷の豊浦の寺の尼の私房にして宴する歌三首
明日香川行き廻る岡の秋萩は 今日降る雨に散りか過ぎなむ 万1557
 右の一首は丹比真人国人
*明日香川に沿うように生えている岡の秋萩は、今日の雨で散り果ててしまうでしょう。

鶉鳴く古りにし里の秋萩を 思ふ人どち相見つるかも 万1558
*鶉の鳴き声が響くなか、古びた里の秋萩を気の合った者同士で眺めました。

秋萩は盛り過ぐるをいたづらに かざしに挿さず帰りなむとや 万1559
 右の二首は沙弥尼等。
*秋萩の盛りが過ぎましたが、このまま簪に挿すこともなくお帰りですか。

【似顔絵サロン】安貴王 あきおう 690 - ? 奈良時代の皇族。父親は春日王。息子が市原王。















忌部 黒麻呂 いんべ の くろまろ ? - ? 奈良時代の官人。歌人。















丹比国人 たぢひのくにひと ? - ? 奈良時代の官吏。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=8

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