万葉集巻第十八4070-4072番歌(一本のなでしこ植ゑし)~アルケーを知りたい(1535)

▼4070番の前書きに出て来る「牛麦」。どう読むのか。うしむぎ、あるいは、なでしこ。歌の作者は家持。歌を贈った相手は清見(せいけん)。酒と一緒に歌を贈った。歌も嬉しい、酒も嬉しい。どちらも人の心を和らげる。4071番も4072番も傍らには酒があったことでしょう。

 庭中の牛麦が花を詠む歌一首
一本のなでしこ植ゑしその心 誰に見せむと思ひそめけむ 万4070
 右は、先の国師の従僧清見、京師に入らむとす。
よりて飲饌を設けて饗宴す。
時に、主人大伴宿禰家持、この歌詞を作り、酒を清見に送る。
*一本の撫子を植えたその心、誰に見せようと思っていらっしゃるのでしょう。

しなざかる越の君らとかくしこそ 柳かづらき楽しく遊ばめ 万4071
 右は、郡司已上の諸人、多くこの会に集ふ。
よりて、守大伴宿禰家持、この歌を作る。
*越中の皆さんがたとこのようにして柳をかづらにして楽しく遊びましょう。

むばたまの夜渡る月を幾夜経と 数みつつ妹は我れ待つらむぞ 万4072
 右は、この夕、月光遅に流れ、和風やくやくに扇ぐ。
すなわち属目によりて、いささかにこの歌を作る。
*夜空を渡る月の夜を幾夜経たかと数えながら妻は帰りを待ち焦がれていることでしょう。

【似顔絵サロン】清見 せいけん ? - ? 奈良時代の僧。越中国師の従僧。748年、越中から京師へ向かった。
















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18

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