万葉集巻第十八4093-4097番歌(ますらをの心思ほゆ)~アルケーを知りたい(1541)

▼今回は朝廷の財政が苦しいときに陸奥小田郡で金を掘り当てた誠に目出度い話の歌。それが4097番。黄金の国だなと思わせてくれる歌。
4094番の長歌を最後に置いたり、似顔絵を前にもってきたりして見にくくなったのはご容赦。いつものように似顔絵を最後に置くと、サムネイルに反映されたかったための苦し紛れの事情。

 英遠の浦に行く日に作る歌一首
英遠の浦に寄する白波いや増しに 立ちしき寄せ来東風をいたみかも 万4093
 右の一首は、大伴宿禰家持作る。
*英遠の浦に寄せる白波がだんだん勢いが増している。これは東風が激しいからでしょうか。

 (4094番の長歌の後に来る)反歌三首
ますらをの心思ほゆ大君の 御言の幸を 一には「の」といふ 聞けば貴み 一には「貴くしあれば」といふ 万4095
*ますらをの心が沸き立つ思いがする。大君のお言葉のありがたさ。聞くと貴くてならない。

大伴の遠つ神祖の奥城は しるく標立て人の知るべく 万4096
*大伴の先祖の奥城には、人が分かるように標識を立てましょう。

天皇の御代栄えむと東なる 陸奥山に金花咲く 万4097
 天平感宝元年の五月の十二日に、越中の国の守が館にして大伴宿禰家持作る。
*天皇の御代が栄えますようにと東国の陸奥山に金の花が咲きました。

【似顔絵サロン】橘奈良麻呂の乱に関係した人々:百済王 敬福 くだらのこにきし きょうふく 698文武天皇元年 - 766天平神護2年8月8日 奈良時代の公卿。橘奈良麻呂の乱や藤原仲麻呂の乱で功績。749年、陸奥小田郡で産出した黄金900両を朝廷に貢上。大伴家持は「すめろぎの御世栄えんと東なる みちのく山に黄金花咲く 万4097」と詠った。757年、橘奈良麻呂の乱では反乱者の勾留、警備、拷問を担当。
















 陸奥の国に金を出だす詔書を賀く歌一首 幷せて短歌
葦原の 瑞穂の国を
天下り 知らしめしける
すめろきの 神の命の
御代重ね 天の日継と
知らし來る 君の御代御代
敷きませる 四方の国には
山川を 広み厚みと
奉る 御調宝は
数へえず 尽くしもかねつ
しかれども 我が大君の
諸人を 誘ひたまひ
よきことを 始めたまひて
金かも 確けくあらむと
思ほして 下悩ますに
鶏が鳴く 東の国の
陸奥の 小田にある山に
金ありと 申したまへれ
御心を 明らめたまひ
天地の 神相うづなひ
すめろきの 御霊助けて
遠き代に かかりしことを
我が御代に 顕はしてあれば
食す国は 栄えむものと
神ながら 思ほしめして
もののふの 八十伴の男を
奉ろへの 向けのまにまに
治めたまへば ここをしも
あやに貴み 嬉しけく
いよよ思ひて 大伴の
遠つ神祖の その名をば
大久米主と 負ひ持ちて
仕へし官 海行かば
水漬く屍 山行かば
草生す屍 大君の
辺にこそ死なめ かへり見は
せじと言立て ますらをの
清きその名を いにしへよ
今のをつづに 流さへる
祖の子どもぞ 大伴と
佐伯の氏は 人の祖の
立つる言立て 人の子は
祖の名絶たず 大君に
まつろふものと 言ひ継げる
言の官ぞ 梓弓
手に取り持ちて 剣太刀
腰に取り佩き 朝守り
夕の守りに 大君の
御門の守り 我をおきて
また人はあらじ といや立て
思ひし増さる 大君の
御言の幸の 一には「を」といふ
聞けば貴み 一には「貴くしあれば」といふ 万4094
*大伴と佐伯の氏は代々大君を弓と剣でお守りする家である。大君の貴いお言葉を聞けるのは幸いだ。

〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=18

コメント

このブログの人気の投稿

万葉集巻第十2219-2222番歌(夕さらずかはづ鳴くなる)~アルケーを知りたい(1477)

万葉集巻22番歌(常にもがもな常処女)~アルケーを知りたい(1242)

万葉集巻第二143‐144番歌(岩代の崖の松が枝結びけむ人は)~アルケーを知りたい(1264)