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アルケーを知りたい(28) 光子 photon

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▼下の表では、光子photonの発見者をアインシュタインさんにしたけど、これはぜんぜん正確な話じゃない。では正確な話は何かというと、歴史的経緯が重なり合って複雑になるので、複雑さの中に正確さが潜んでいる、というような言い方になる。 ▼古典統計力学で説明していた段階から、量子統計力学での説明が必要になってきた段階の話だ。分類して体系的に理解できていた世界ではなくなる。世界観がややこしくなる。例えば光子は、量子論から言うとボーズ粒子、標準模型ではゲージ粒子、という。 ▼マックス・プランクさんが黒体放射で光の飛び出し方が飛び飛びになる理由を説明するのに量子という概念を用いた。プランクさんは古典力学の人だったので、あくまで仮の話として、という気持ちだったらしい。プランクさんは古典統計力学の人。その説明を発展させたのがアインシュタインさん。アインシュタインさんは量子統計力学の人。 ▼光は粒か、それとも波か、どっちなんか?論争があって、収まりがつかない時間が長く続いた。で、下の表では1900年にプランクさんが仮説を出し、コンプトンさんが諸説を統一する形でケリがついたのが1926年、とした。ここで見る限りは、光は粒子であり波であるという結論を物理学者が認めるまでに26年かかっている。・・・ここでもゆっくり進もう。 ▲高温に熱せられた物体が発する光の研究から、量子仮説を発表したマックス・プランクさん。ドイツの物理学者。マックスプランク研究所はプランクさんの名前を冠したもの。 ▲光量子仮説で光電効果を理論的に説明した功績で1921年のノーベル物理学賞を受賞したアルベルト・アインシュタインさん。無名の時期からプランクさんは高く評価していた。 ▲光の粒子説に立った研究を進め、photon(光子)と命名したギルバート・ルイスさん。アメリカの物理学者。 ▲光の波動性と粒子性の論争に決着をつけたアーサー・コンプトンさん。電磁放射線の粒子性を実証するコンプトン効果を発見で1927年に物理学賞を受賞。アメリカの物理学者。

アルケーを知りたい(27) ゲージ粒子 gauge boson

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▼今まで(17回から26回)は物質を構成する粒子を見てきた。大きく分けて、重めのハドロンと軽めのレプトン。ハドロンは陽子と中性子のグループであるバリオンと中間子のグループであるメゾンに分けられた。レプトンには、電子、ミュー粒子、ニュートリノがいた。 ▼今回から力を媒介する粒子を見ていく。理論の大元は電磁気学の祖、ジェームズ・マクスウェルさん。理論を数学者と物理学者が発展させ、パウリさんが量子物理に使って普及が進んだ。 ▼マクスウェルさんの時代の物理学からパウリさんの時代の物理学は、メチャ進化して粒子の分け方が違ってきている。途中で違う世界に飛躍しているかのよう。古典力学は個々の粒子をきちんと分類できた(古典統計)。しかし、量子力学になるとそれが壊れるというか溶ける感じ(量子統計)。 ▼量子力学で説明される粒子を理解するには、まず用語と概念の説明を知ることからと考え、分からなくても少しずつ進んでいくことにする。 ▼力を媒介する粒子は3つある。光子、ウィークボゾン、グルーオンだ。光子は電磁相互作用を担う。ウィークボゾンは弱い相互作用を担う。グルーオンは強い相互作用を担う。ここで言っている相互作用については、後日、調べを進める(今のところ、そういうものばかりだ)。 ▼ゲージ粒子はボーズ粒子である。ボーズ粒子とは、スピン角運動量の大きさに基づいて粒子を分類するときの名称。整数倍のスピンを伴う粒子。 ▲電磁気学の祖、ジェイムス・マクスウェルさん。スコットランドの物理学者。 ▲統計力学の祖、ルードヴィッヒ・ボルツマンさん。ウィーン出身の物理学者。古典力学の量子の振る舞いはマクスウェル=ボルツマン統計(M-B統計)で表される。

アルケーを知りたい(26) ニュートリノ neutrino

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▼ニュートリノはレプトンのグループ。パウリさんやフェルミさんが存在を予想していたものの、メチャ小さいので発見まで30年ほどの時間がかかった粒子。 ▼発見された後、研究が進むにつれ、ニュートリノはさらに「電子ニュートリノ」「ミューニュートリノ」「タウニュートリノ」と細かく分類されていく。少しずつ、全部見ていくのが楽しみだ。 ▼日本にはスーパー・カミオカンデという観測装置があって、太陽の中心部で起きる原子核反応とか超新星爆発で地球に飛んでくるニュートリノをキャッチしている。 ▲ニュートリノの検出の功績でノーベル賞を受賞したフレデリック・ライネスさん。物理学者。 ▲1951年から5年間、ライネスさんと共にニュートリノの検出実験を行ったクライド・カワンさん。アメリカの物理学者。

アルケーを知りたい(25) ミュー粒子 μ: muon

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▼ミュー粒子は、原子核中で陽子を取りまとめる中間子が存在するはず、という湯川秀樹さんの予言の実現が期待される過程で見つかった粒子。 ▼陽子より軽く、電子より重い。中間的な質量。しかし、陽子を取りまとめる強い力を持たないことが判明。その結果、中間子ではないと判断され、メゾンではなく電子と同じグループのレプトンに分類された。 ▼レプトンは軽粒子のグループの総称。グループの中に電子とニュートリノがいる。ミュー粒子は電子より200倍重く、ニュートリノよりもっと重いけど、軽粒子の仲間に入れてもらった。 ▲ミュー粒子を発見したデイヴィッド・アンダーソンさん。アメリカの実験物理学者。 ▲アンダーソンさんの下で博士号取得を目指していた時期、ウィルソンの霧箱で宇宙線の中からミュー粒子を発見したセス・ネッダーマイヤーさん。

アルケーを知りたい(24) メゾン meson

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▼原子核の中で陽子同士をくっつける働きをするのが中間子(メゾン)。湯川秀樹さんが理論的に存在を予言し、12年後にセシル・パウエルさんらが発見した。 ▼メゾンはクオークからなる複合粒子。 ▲原子核内で陽子同士を結び付ける中間子の存在を理論で予言した湯川秀樹さん。 ▲宇宙線の中からパイ中間子を発見したイギリスの物理学者セシル・パウエルさん。

アルケーを知りたい(23) バリオン baryon

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▼物質を構成する最小単位と考えられていた原子。構成は、原子核と電子。原子核は陽子と中性子。 ▼研究が進むとさらに小さいやつがたくさん見つかるようになった。物質の最小構成単位は原子から素粒子という言葉の置き換わった。 ▼物理学者は、たくさん見つかった素粒子を整頓するため、陽子と中性子のように重くて分割可能性があるのをハドロン、軽くて分割できなさそうなのをレプトンとして分類した。 ▼ハドロンの陽子を見ると、プラス同士である。ふつうは反発するはずのものだ。なのにまとまっている。陽子がバラけずに原子核を構成しているということは、陽子同士を結びつける何か存在しているはずだ。ということでハドロンは、陽子と中性子のグループであるバリオンと陽子がバラけないように働くメゾン(中間子)の二つに分けられた。 ▼さらに研究が進むとバリオンはクオークで構成されていることが分かった。もしかするとクオークが物質の究極の構成単位なのかも知れない。 ▲ガイガーカウンターを発明したハンス・ガイガーさん。中性子を発見したチャドウィックさんは修士課程の後ガイガーさんの下で修行した関係がある。

アルケーを知りたい(22) ハドロン hadron

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▼前回のレプトンに続く今回はハドロン。新しい用語が次々出てくるので、用語と意味を確認する(それだけで精一杯)。 ▼現代の物理学では、素粒子にはハドロンとレプトン、そしてゲージ粒子がある。言い方を変えると、ハドロンはレプトン及びゲージ粒子と共に素粒子を構成する。 ▼ハドロンにはバリオンとメゾンがある。 ▼バリオンの例は、陽子や中性子である。 ・バリオンは3つのクォークが構成している。 ・バリオンはフェルミ粒子である。 ▼メゾンの例は、π中間子である。 ・メゾンはクォークと反クォークのペアが構成している。 ・メゾンはボース粒子である。 ▼ハドロンはクオークとグルーオンが構成している。 ▼ここまでに出てきた謎の言葉は、クオーク、フェルミ粒子、ボーズ粒子、グルーオン、ゲージ粒子だ。 ・クオークはハドロンを構成している粒子。 ・フェルミ粒子は「半奇数のスピン」を持つ粒子。 ・ボーズ粒子は「整数のスピン」を持つ粒子。 ・グルーオンはクオーク同士の間に働く力を媒介するゲージ粒子。 ・ゲージ粒子は力を媒介する粒子。 ▲ハドロンの命名者、レフ・オクンさん。ロシアの理論物理学者。