投稿

万葉集巻第7_1092番歌(鳴る神の音のみ聞きし)~アルケーを知りたい(1911)

イメージ
▼今回は冒頭が「鳴る神の」というインパクトの強い枕詞で始まっているものだから、後がぶっ飛んでしまいました。鳴る神の、はあくまで音の枕詞なので、冷静に続きを見ると、何のことはない、噂で聞いていた山を実際に見たよ、という内容。だからどうした?とツッコミを入れたくなる。もう少し冷静になると、噂で聞いていた山を自分の目で見たという満足感、納得感、自慢みたいな気持ちを詠っているのだろう、と思ふ。噂でしか聞いたことのないストラディバリウスを今日、この目で見ました!的な。  山を詠む 鳴る神の音のみ聞きし巻向の 檜原の山を今日見つるかも  万1092 *人の話でしか聞いたことのない巻向の檜原山を今日、この目で見ました。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第7_1091番歌(通るべく雨はな降りそ)~アルケーを知りたい(1910)

イメージ
▼今回の歌を分かりやすくするために並び替えて見ると、 我れ、 我妹子が 形見の衣、 下に着り、 雨は 通るべく な降りそ になった。倒置表現、要らん!と思うが、かといってストレートだと味わいがなくなるとは言わんが、味が変わる。となると、倒置表現は和歌を和歌たらしめる基本の作法なのだろう、きっと。いまは服のサイズはS、M、Lで男性用と女性用がある。その感覚からすると妻の衣を着るのはサイズの関係で難しいのではないか・・・と思う。万葉時代はフリーサイズだったのだろう。歌を見て思うことがことごとくピント外れだ。この歌の芯は妻への思いを謳う男の心にありそう。ちゃうやろか。 通るべく雨はな降りそ我妹子が 形見の衣我れ下に着り  万1091 *雨が浸み通るほど降らないで欲しい。妻の形見の衣を下に着ているから。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第7_1090番歌(我妹子が赤裳の裾の)~アルケーを知りたい(1909)

イメージ
▼雨を共通項にして妻を思い出している良い感じの歌。お揃い、とか、一緒であることは大事なことなのだ。距離が離れていても、いや距離が離れているからこそ、あえて。  雨を詠む 我妹子が赤裳の裾のひづつらむ 今日の小雨に我れさへ濡れな  万1090 * 今日の 小雨で妻は 赤裳の裾を濡らしているだろう。私も濡れていくことにしよう。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第7_1089番歌(大海に島もあらなくに)~アルケーを知りたい(1908)

イメージ
▼今回は、天皇が伊勢に行幸したときに随行した人が詠んだ歌。作者不明。目の前に広がる海、おだやかな波、空には雲。陸から見たのか、舟から見たのか分からない。分からないことが多いけど、風景が見えて来そう。主張も感想もない、物語の始まりか途中かもわからない。この風景描写から自分で感じれば良いのだろう、この歌は。  大海に島もあらなくに海原の たゆたふ波に立てる白雲  万1089 *大きな海、島もない海原でたゆたう波の上に見える白い雲。   右の一首は、伊勢の従駕(おほみとも)の作。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第7_1088番歌(あしひきの山川の瀬の)~アルケーを知りたい(1907)

イメージ
▼前回は、結果から原因を推理するタイプ、今回は、因果を仄めかすタイプ。共通する言葉は川・弓月が岳・雲。印象は、一首で世界が完結・心情吐露なし・男性的・ドライ。月の歌の二首セット、とても良い。 あしひきの山川の瀬の鳴るなへに 弓月が岳に雲立ちわたる  万1088 *山で川の瀬の音が賑やかだ。見ると弓月岳に雲が湧き立っている。   右の二首は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第7_1087番歌(穴師川川波立ちぬ)~アルケーを知りたい(1906)

イメージ
▼川の水量が増えたのを見て、上流の山で雨が降っていると予想する歌。そのまま言うと面白くない理科的説明になる。しかし、「川波立ちぬ」と「雲居立てる」というと歌になるのだな、これが。  雲を詠む 穴師川 (あなしがは) 川波立ちぬ巻向の 弓月が岳に雲居立てるらし  万1087 *穴師川に波が立っている。巻向の弓月岳の空に雨雲が湧いているらしい。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7

万葉集巻第7_1086番歌(靫懸くる伴の男広き)~アルケーを知りたい(1905)

イメージ
▼今回の歌、解釈によると、前半は、難波の地域には矢立てを肩にかけた大伴の武人が大勢いたことを表しているそうだ。後半は、月が一帯を照らしている様子を「国栄えむ」と寿いでいる。誰が詠んだ歌か分からないけれど、大伴氏の領地を褒めている歌。静かなモノクロの風景画のイメージ。夜の月が照らし出す風景はどんなだろう、見たいと思ふ。 靫 (ゆき) 懸くる伴の男広き大伴に 国栄えむと月は照るらし  万1086 *大伴の領地一帯が栄えませというように月は照っているらしい。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=7