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万葉集巻第十2198-2201番歌(物思ふと隠らひ居りて)~アルケーを知りたい(1472)

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▼2199番は孤独の時間の後、外を見ると紅葉している、という歌。どれくらいの時間を経たのかは分からない。けれど、外を見ると山が色づいているのに気が付く。物思いの時間の後で頭が静かになったのだろう。良き。 風吹けば黄葉散りつつすくなくも 吾の松原清くあらなくに  万2198 *風が吹くと黄葉が散ります。吾の松原の風景の清らかさと言ったら・・・ 物思ふと隠らひ居りて今日見れば 春日の山は色づきにけり  万2199 *物思いに耽るため一人になっています。今日外を見ると春日山が色づいています。 九月の白露負ひてあしひきの 山のもみたむ見まくしもよし  万2200 *九月の白露が降りて山が色づく様子が見られるのは結構なこと。 妹がりと馬に鞍置きて生駒山 うち越え来れば黄葉散りつつ  万2201 *妻の待つ家に帰ろうと馬に乗って生駒山を越えていると黄葉が散っています。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の間接的な関係者: 審祥  しんじょう ? - ? 奈良時代の華厳宗の僧。良弁とともに華厳宗の基礎を築いた。740年、良弁が金鐘寺で始めた華厳経の講説で3年間講師を務めた。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2194 - 2197番歌(しぐれの雨間なくし降れば)~アルケーを知りたい(1471)

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▼紅葉の歌4首。若葉の薄緑、太陽を浴びるうちに濃い緑、そして秋の紅葉、落葉。若葉の季節の今、紅葉の歌を眺めるのも味わいあり。 雁がねの来鳴きしなへに韓衣 竜田の山はもみちそめたり  万2194 *雁が来て鳴くタイミングで竜田山が紅葉しています。 雁がねの声聞くなへに明日よりは 春日の山はもみちそめなむ  万2195 *雁の鳴き声を聞いたので明日からは春日山は紅葉ですね。 しぐれの雨間なくし降れば 真木の葉も争ひかねて色づきにけり  万2196 *時雨が降り続けるので、真木の葉も我慢しきれず色づいています。 いちしろくしぐれの雨は降らなくに 大城の山は色づきにけり   「大城」といふは筑前の国の御笠の都の大野山の頂にあり、号けて「大城」といふ  万2197 *時雨がそれほど降ったわけでもないのに大城山は色づいています。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の間接的な関係者: 良弁  りょうべん 689 - 774 奈良時代の華厳宗の僧。東大寺の初代別当。聖武天皇の看病禅師。死去前、親王禅師(早良親王)に後事を託した。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2190‐2193番歌(秋風の日に異に吹けば)~アルケーを知りたい(1470)

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▼2190番は、身近な変化から、遠隔地の様子を想像する歌。2191番は、鳥の鳴き声から季節の変化を感じている歌。2192番は、布地の白さと紅葉を対比させている歌。2193番は、風の吹き方と季節の変化をつないだ歌。いずれも 作者が 何かと何かを結合させて世界観を表現している。これもひとつの新結合、イノベーションだ。 我が門の浅茅色づく吉隠の 浪柴の野の黄葉散るらし  万2190 *我が家の浅茅が色づいたので、吉隠の浪柴の野では黄葉が散っているでしょう。 雁が音を聞きつるなへに高松の 野の上の草ぞ色づきにける  万2191 *雁の鳴き声を聞きました。高松の野原の草が色づいています。 我が背子が白栲衣行き触れば にほひぬべくももみつ山かも  万2192 *私の夫が白栲の服で行って触れただけで色移りしそうに紅葉した山です。 秋風の日に異に吹けば 水茎の岡の木の葉も色づきにけり  万2193 *秋風が日に日に強まるので、水茎岡の木の葉も紅葉しました。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の間接的な関係者: 善珠  ぜんじゅ 723 - 797 奈良時代から平安時代前期の僧。事件後、早良親王の使者に「前世の残業が災いを齎しているので、此生は怨みを抱かぬように」と諭した。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2186‐2189番歌(秋されば置く白露に)~アルケーを知りたい(1469)

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▼万葉時代の人はすぐ枝を折ってはかんざしにしていた。当時も樹木を育てる人からは困ったものだと思われていたようだ。今は折り取らず、目出度い意匠の缶バッチを付ければよい。この雨で にほふ桜花の散らまく惜しも と思ふ。 秋されば置く白露に我が門の 浅茅が末葉色づきにけり  万2186 *秋になり白露が降りるようになりました。我が家の門の浅茅の葉っぱも色づきました。 妹が袖巻来の山の朝露に にほふ黄葉の散らまく惜しも  万2187 *巻来山の朝露で色づいた黄葉が散るのが惜しい。 黄葉のにほひは繁ししかれども 妻梨の木を手折りかざさむ  万2188 *黄葉は色とりどりだ。でも妻のない私は妻梨の木を手折ってかんざしにします。 露霜の寒き夕の秋風に もみちにけらし妻梨の木は  万2189 *露霜が降りる寒い夕方の秋風に紅葉したらしい妻梨の木は。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の間接的な関係者: 小野 竹良 /都久良 おの の つくら ? - 769 奈良時代の貴族。764年の藤原仲麻呂の乱では孝謙上皇側。藤原家依と同じ時期に昇叙。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2182‐2185番歌(大坂を我が越え来れば)~アルケーを知りたい(1468)

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▼秋を感じさせるもの、露、萩、黄葉、雁の声。時雨で流れる山の黄葉。ただの風景、音じゃなくて、風情として受け取れる感性の豊かさ。勉強になります。 このころの暁露に我がやどの 萩の下葉は色づきにけり  万2182 *このごろ明け方に露が降りるようになりました。我が家の萩の葉が色づいてきました。 雁がねは今は来鳴きぬ我が待ちし 黄葉早継げ待たば苦しも  万2183 *雁が今飛んできて鳴いています。私が待っている黄葉よ、続いて早く色付け。待つのは辛いから。 秋山をゆめ人懸くな忘れにし その黄葉の思ほゆらくに  万2184 *秋山のことをくれぐれも口にしないでください。忘れている黄葉を思い出してしまうから。 大坂を我が越え来れば二上に 黄葉流るしぐれ降りつつ  万2185 *大坂を越えて私がやって来ると、時雨と一緒に二上山の黄葉が流れています。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の間接的な関係者: 藤原 家依  ふじわら の いえより 743 - 785 奈良時代の公卿。藤原永手の長男。桓武朝では、大伴家持・藤原小黒麻呂・藤原種継らが次々と中納言に任ぜられる傍らで昇進できないまま。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2178‐2181番歌(九月のしぐれの雨に)~アルケーを知りたい(1467)

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▼2178と2179番は、秋の歌。2180番は歌に九月と詠みこまれている。2181番は「 寒き朝明 」と寒さが詠われている。この歌を見ると万葉の時代は家の中にいても外の天気や物音が今よりもよく伝わってきたのだろう、と今昔の違いが分かる。分かるとよりいっそう時々聞こえる鳥の音がありがたいと思ふ。  黄葉を詠む 妻ごもる矢野の神山露霜に にほひそめたり散らまく惜しも  万2178 *矢野の神山が露霜のために見事に色づいた黄葉が散るのが惜しいです。 朝露ににほひそめたる秋山に しぐれな降りそありわたるがね  万2179  右の二首は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。 *朝露に染まったような秋山に時雨よ降らないでおくれよ。 九月のしぐれの雨に濡れ通り 春日の山は色づきにけり  万2180 *九月の時雨の雨ですっかり濡れた春日山が色づいています。 雁が音の寒き朝明の露ならし 春日の山をもみたすものは  万2181 *雁の鳴き声が寒々と聞こえる明け方。春日山を色づかせるのは朝の露だろう。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の間接的な関係者: 神王  みわおう 737 -  志貴皇子の孫。榎井王の子。右大臣。桓武天皇の近親として桓武朝後半の治世を支え全うした。礼儀正しく慎み深い性格、飾ることなく、物事にも執着せずあっさりしていた。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10

万葉集巻第十2174‐2177番歌(春は萌え夏は緑に)~アルケーを知りたい(1466)

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▼秋の風情を詠った作品四首。2174番の作者は農家か、農家に雇われた人の作と思ふ。稲刈りは一気に済ませたいので田んぼの近くにテント(仮廬)を作って寝泊まりしていたようだ。冷え込む夜はさぞ寒かったことだろう。その寒さを強調した歌が2175番。露が降りると萩の花の時期も終わり、という。2176番は稲刈りが進むと露が下りる穂や葉がなくなる、露の立場で詠う。2177番は春から秋までの山の色の変化を詠う歌。作者は、秋が最高、と思っているようだが、どうだろう。 秋田刈る仮廬を作り我が居れば 衣手寒く露ぞ置きにける  万2174 *秋、稲刈り用の仮小屋を作って入っていると、袖口は寒く露までおりたよ。 このころの秋風寒し萩の花 散らす白露置きにけらしも  万2175 *この頃は秋風が寒くなってきました。萩の花を散らす露も降り始めています。 秋田刈る苫手動くなり白露し 置く穂田なしと告げに来ぬらし   一には「告げに来らしも」といふ  万2176 *秋の稲刈りをする小屋の苫が風で動きます。白露が下りる稲穂がありませんと言いに来ているようです。  山を詠む 春は萌え夏は緑に紅の まだらに見ゆる秋の山かも  万2177 *春は萌え、夏は緑一色、いまは紅葉がまだらに見える 秋の 山です。 【似顔絵サロン】785年、藤原種継暗殺事件の関係者: 桓武 天皇  かんむてんのう 737 - 806 第50代天皇。平城京から長岡京および平安京への遷都を行った。 〔参考〕 伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。 https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=10