アルケーを知りたい(288) フォン・ノイマン/John von Neumann_その2
今回の話題(D)コンピュータのエピソード
▼フリッシュさんは、フォン・ノイマンさんと1949年(推定)にロンドン行きの汽車の中で再会する。フリッシュさんは、ケンブリッジ大学のモーリス・ウィルクスさんが製作したコンピュータEDSACにしびれていたので、さっそくノイマンさんにその話を始める。するとノイマンさんは・・・
▼ノイマンさんの反応:He cut me short: ' Listen, Otto, those tricks are all known. The EDSAC has one advantage: it works! ' (しかし、ノイマンはすぐに私を遮って「いいかい、オットー、そのトリックは誰だって知っているよ。でも、確かに、EDSACはひとつ優れた点がある。あれは本当に動くんだ」と言った)
▼フリッシュさんの感想: I was a bit deflated but also cheered to hear from the master that we were not doing so badly in Cambridge. (私は少し意気消沈したが、一方で、ケンブリッジで私たちのやっていることはそれほど間違っていないと、創造主から直接聞くことができ、元気も出た)
▼この短いエピソード中の「味わいポイント(キーワード)」は・・・
【1949年】EDSACが初稼働の年。
【EDSAC】Electronic Digital Sequential(あるいはDelay Storage) Automatic Calculator。M・ウィルクスさんとケンブリッジ大学数学研究所のメンバーが開発した電子計算機の名前。出資者はJ. Lyons & Co. Ltd. 同社はEDSACのデザインに基づいた初の商用コンピュータ LEO I を開発。(Wikipedia)
【モーリス・ウィルクス】Maurice Wilkes, 1913-2010 ケンブリッジ大学数学研究所の所長。
【ケンブリッジ大学】フリッシュさんは1947年からジャクソニアン教授職に就く。
味わいポイントを見ていくのもこれからの楽しみだ。
▼儂の感想:2人が汽車で再会した1949年、ノイマンさんはプリンストンでIASマシンを建設中だった。動くコンピュータを作るのがどれだけ難しいことか知っていたノイマンさんだからこそ「あれは本当に動くんだ」という言葉にはインパクトがある。フリッシュさんのオリジナルの文と松田訳を並べると、オリジナルから率直さ、訳からは人間の滋味が伝わって来る。
〔出所〕
オットー・フリッシュ著、松田文夫訳(2003)『何と少ししか覚えていないことだろう』吉岡書店、2003。p.261
Otto Robert Frisch (1979), What little I remember. Cambridge University Press. p.211
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