Tube Alloys理事会の議長にしてI.C.I.の研究担当重役(ウォレス・エイカースさん):アルケーを知りたい(349)

今回の話題は(C)マンハッタン計画。

▼マンハッタン計画とはWWIIの時、アメリカが実行した3年間の原爆プロジェクトのこと。テンポが非常に早い。
1938年の核分裂の発見から1942年のプロジェクトのスタートまでが4年間。
本格的に原爆の製造に取り掛かってから完成まで期間は3年間。
アルケーを探求する核物理学上の発見から武器として使用されるまで7年間。
この間に、ヨーロッパの核物理学者がアメリカに集まった。どんな人が集まったのか、これから順に見ていく・・・とは言っても、すでにこのブログで見た人がほとんどなので、フリッシュさんとパイエルスさんの本に出てくるエピソードから人物像を想像して楽しむ。
▼最初はウォレス・エイカースさん。我らがチャドウィックさんが六フッ化フランの製造を委託したインペリアル・ケミカル・インダストリーズ(I.C.I.)の物理化学者。

ウォレス・エイカース
 Wallace Akers
, 1888年9月9日ロンドン東部 - 1954年11月1日ハンプシャー。オックスフォード大学クライストチャーチ卒業。物理化学者、実業家。1941-1945、Tubu Alloysの監督。マンハッタン計画に英国代表として参加する可能性があったものの、米国の事情で参加できず。代表はチャドウィックさんが務める。WWII後、インペリアル・ケミカル・インダストリーズ(I.C.I.)の研究ディレクター。

フリッシュ:チャドウィックさんからアメリカ行きを打診され即答したフリッシュさん。1週間でイギリス国民になり、兵役の免除証明を取り、パスポートを取る作業を終える。渡米する人と一緒に客船アンデス号に乗船。この時にエイカースさんが瞬間的に出てくる。「私は乗船のための『チケット』を忘れたが、グループの責任者のウォレス・エイカースが合図をして、通してくれた(p.183)」
▼これだけなので人物像は分からない。

パイエルス:Tube Alloysを訳者の松田さん(フリッシュさんの本の訳も同じく松田さんの手による)は「管合金」と訳している。エイカースさんが出てくるくだりはフリッシュ本より長い。「『管合金』理事会の議長はI.C.I.の研究担当重役のW・A・エイカースであり、彼は戦争の間、会社の業務を免除されていた。エイカースは偉大なエネルギーと統率力の持ち主で、人の使い方がうまく、優れた議長だった(p.250)」
▼これも人物像は分からない。この人は、2人の本に取り上げられている。しかし、残念ながら人物像は伺えない。

〔参考〕https://en.wikipedia.org/wiki/Wallace_Akers
オットー・フリッシュ著、松田文夫訳(2003)『何と少ししか覚えていないことだろう』吉岡書店。
Otto Robert Frisch (1979),  What little I remember. Cambridge University Press. 
ルドルフ・パイエルス著、松田文夫訳(2004)『渡り鳥ーパイエルスの物理学と家族の遍歴ー』吉岡書店。

リーゼ・マイトナー Lise Meitner, 1878年11月7日 - 1968年10月27日
オットー・ロベルト・フリッシュ Otto Robert Frisch, 1904年10月1日 - 1979年9月22日
ルドルフ・パイエルス Rudolf Ernst Peierls, 1907年6月5日 - 1995年9月19日


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