20世紀の最も特筆すべき科学者の一人(G・I・テイラーさん):アルケーを知りたい(376)

今回の話題は(C)マンハッタン計画。

▼マンハッタン計画で流体力学チームの責任者だったパイエルスさん(37)は、この分野の先達のG・I・テイラーさん
(58)に会っている。その結果、パイエルスさんは「流体力学の視野が広がり、偏微分方程式の扱い方を体得した」という。学び方の例として面白いので紹介する。

G・I・テイラーさんは、イギリスの物理学者、応用数学者。マンハッタン計画には、流体力学の専門家として1944-45年に参加。ケンブリッジ大学でテイラーさんと一緒に仕事をしたことがある応用数学者のジョージ・バチェラーさん(1920 - 2000)は、テイラーさんを「20世紀の最も特筆すべき科学者の一人」と呼んだ。

ジェフリー・イングラム・テイラー Geoffrey Ingram Taylor, 1886年3月7日、ロンドン生まれ - 1975年6月27日、ケンブリッジで死去。ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ卒業。指導教員はJ・J・トムソン先生。

パイエルス本:パイエルスさんはテイラーさんと直接、交流を持った。「テイラーは非凡な科学者で、理論から実験まで、多くの分野で基本的な成果を挙げていた。[前回、キスチャコフスキーさんが提出した]問題で私はテイラーと手紙を交わし、その後ケンブリッジで本人に会った。彼は飾り気のないとても魅力的な男だった(p.266)」

マンハッタン計画を進めるためパイエルスさんが理論の勉強に集中していたことが分かる箇所。「テイラーからの手紙は衝撃波の理論に言及していたが、私にはその知識が全くなく、彼の手紙を理解するには猛烈な予習が必要だった。おかげで、私は流体力学の視野が広がった。(中略)この時点で私は偏微分方程式の扱い方を体得した気がした(pp.266-267)」

〔参考〕https://en.wikipedia.org/wiki/G._I._Taylor
オットー・フリッシュ著、松田文夫訳(2003)『何と少ししか覚えていないことだろう』吉岡書店。
Otto Robert Frisch (1979),  What little I remember. Cambridge University Press. 
ルドルフ・パイエルス著、松田文夫訳(2004)『渡り鳥ーパイエルスの物理学と家族の遍歴ー』吉岡書店。
Rudolf Peierls (1985), Bird of Passage --- Recollections of a Physicist. Princeton University Press.
ルドルフ・パイエルス Rudolf Ernst Peierls, 1907年6月5日 - 1995年9月19日
オットー・ロベルト・フリッシュ Otto Robert Frisch, 1904年10月1日 - 1979年9月22日
リーゼ・マイトナー Lise Meitner, 1878年11月7日 - 1968年10月27日

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