愛されキャラのヒポコンドリア=気病み=(エゴン・ブレッチャーさん):アルケーを知りたい(359)

今回の話題は(C)マンハッタン計画。

▼ハルバン=コワルスキー組がケンブリッジで重水を使う研究を行っていた時、関連研究を進めていたのがN・フェザーさん、イーゴン・ブレッチャーさん、N・ケマーさんだった。
ブレッチャーさんは、フリッシュさんとパイエルスさんが同じ話題(ヒポコンドリア)で描いている。松田さんの訳と原本の原文の両方を引用した。

フリッシュ本:ロスアラモスでフリッシュさんは研究の傍ら卓上台地(メサ)に登っていた。そのときの話にブレッチャーさんが登場する。「メサに登る冒険に行くときには、いつも、ケンブリッジで最初に出会ったスイス人の友人、イーゴン・ブレッチャーと一緒だった(p.189)」

フリッシュさんはブレッチャーさんを次のように紹介している。「ブレッチャーは物理学と化学を結びつけてラザフォードと仕事をしており、恐らく、プルトニウムの使用を最初に予測した男だった(p.189)」

ブレッチャーさんの人物スケッチが次だ。「ブレッチャーはケンブリッジではヒポコンドリア*だと思われていたが(ブレッチャーはかつて『今日は、私のどこが悪いのかわからない。だからきっと、今日は、私の気分がいいんだ』**と言ったことがあると伝えられている)、たいへん熱心な登山家で、よじ登れない崖を見ると、挑戦しないではいられない性格だった(p.189)」

*ヒポコンドリア hypochondriac 気病み。
** ' I don't know what is wrong with me today; I feel fine! ' (p.153)

パイエルス本:「ケンブリッジの研究者仲間全員で作り上げたお互いの『有名な最後の言葉』もある。いつも体の具合が悪いとこぼしていたブレッチャーの言葉は覚えている。最初、彼については誰も適当なものを思いつかなかったのだが、ある朝ブレッチャーがやって来て自分でそれを提供した。『今日はいったい私のどこが悪いんだろう。こんなに気分がいいなんて』***(p.242)」

*** ' I don' know what's the matter with me today; I'm feeling so well! (p.160)

〔参考〕https://en.wikipedia.org/wiki/Egon_Bretscher
オットー・フリッシュ著、松田文夫訳(2003)『何と少ししか覚えていないことだろう』吉岡書店。
Otto Robert Frisch (1979),  What little I remember. Cambridge University Press. 
ルドルフ・パイエルス著、松田文夫訳(2004)『渡り鳥ーパイエルスの物理学と家族の遍歴ー』吉岡書店。
Rudolf Peierls (1985), Bird of Passage --- Recollections of a Physicist. Princeton University Press.
ルドルフ・パイエルス Rudolf Ernst Peierls, 1907年6月5日 - 1995年9月19日
オットー・ロベルト・フリッシュ Otto Robert Frisch, 1904年10月1日 - 1979年9月22日
リーゼ・マイトナー Lise Meitner, 1878年11月7日 - 1968年10月27日

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