師匠と母国の期待にいつも応えた物理学者(アーネスト・チタートンさん):アルケーを知りたい(360)

今回の話題は(C)マンハッタン計画。

▼フリッシュさんがバーミンガム大学で放射線の実験をしていた時期の話。オリファントさんがフリッシュさんの実験助手に優秀な若者を付けてくれる。それがチタートンさん。

フリッシュ本:1940年、フリッシュさんはバーミンガム大学で電離箱を使って放射線の実験を重ねていた。その時の話。「電離箱の電気回路は、オリファントが私の仕事の助手として付けてくれたアーネスト・チタートンにより作られていた。チタートンは、後にオーストラリアのキャンベラで教授となり物理学部長となってナイトに叙せられるが、当時はたいへん聡明で活動的な若い学生だった(p.161)」

二人はこの実験を通して「ウランがときどき自発的に核分裂を生じる」現象を発見。しかし、時期がWWIIであり、やっていることが軍事機密のため「チタートンはこの重要な発見を公表できかなった(pp.161-162)」

しかし「この現象は同じ頃にロシアの二人の物理学者G・N・フリョーロフとK・A・ペトチャクにより発見され、ウランの自発核分裂の発見者としては彼らが一般に引用されている(p.162)」
ここから、核分裂の研究は、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツだけでなくロシアでも進められており、時間の競争だったことがわかる。だから次のパイエルスさんの緊張感になる。

パイエルス本:「私たちは、いま従事している仕事がこの国の死命を制する重要なものであることを絶え間なく意識していた。ドイツが先に目標を達成したときの恐怖は、私たちを絶望的にさせた(p.253)」

ロスアラモスに集まった仲間の名前を挙げてた箇所でチタートンさんが入っている。「イギリスの仲間には、私と一緒に来たクラウス・フックスのほか、ケンブリッジから来たイーゴンとハンニ・ブレッチャー夫妻、リバプールから来たイギリスチームの代表のチャドウィックとフリッシュ、リバプール滞在中に戦争が始まって帰国できなくなったポーランド人のジョセフ・ロトブラット、オックスフォードから来たジェームス・クック、そして、バーミンガムから来たフィリップ・ムーンとオリファントの生徒だったアーネスト・チタートンらがいた(p.288)」

アーネスト・チタートン Ernest William Titterton, 1916 年3月4日 - 1990年2月8日
1916年、イギリス、スタッフォードシャー州タムワース生まれ
1934(18)奨学金を得てバーミンガム大学に入学。
1937(21)マーク・オリファントさんの下で研究。
1938(22)ケンブリッジ大学で理学修士。
1939(23)WWII。レーダーの戦時研究に参加。
1941(25)バーミンガム大学で物理学博士(指導教員はオリファントさん)。フリッシュさんと研究。
1943(27)マンハッタン計画に参加するため渡米。ロスアラモス研究所にフリッシュさんと到着。到着後はそれぞれ別プロジェクトに従事。
1945(29)トリニティ核実験に参加。
1946(30)ビキニ環礁でクロスロード核実験に参加。
1947(31)帰国。オックスフォードシャーのハーウェルにある原子力研究所で研究。
1951(35)オリファントさんの誘いを受けオーストラリア国立大学ANUで教授。
1953(37)オーストラリアで行った英国の核兵器実験に協力。
1981(65)引退。ANUの原子核物理学部の客員研究員。
1990(74)肺塞栓症のためオーストラリアのキャンベラで死去。

〔参考〕https://en.wikipedia.org/wiki/Ernest_Titterton
オットー・フリッシュ著、松田文夫訳(2003)『何と少ししか覚えていないことだろう』吉岡書店。
Otto Robert Frisch (1979),  What little I remember. Cambridge University Press. 
ルドルフ・パイエルス著、松田文夫訳(2004)『渡り鳥ーパイエルスの物理学と家族の遍歴ー』吉岡書店。
Rudolf Peierls (1985), Bird of Passage --- Recollections of a Physicist. Princeton University Press.
ルドルフ・パイエルス Rudolf Ernst Peierls, 1907年6月5日 - 1995年9月19日
オットー・ロベルト・フリッシュ Otto Robert Frisch, 1904年10月1日 - 1979年9月22日
リーゼ・マイトナー Lise Meitner, 1878年11月7日 - 1968年10月27日

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