伊能忠敬さんが計算した子午線弧長:アルケーを知りたい(437)

今回の話題は(A)物理学。

▼今回は、子午線弧長の測定は日本でも進んでいた話。
伊能忠敬さんをフューチャーする。

▼1795年、日本トップの天文学者・高橋至時(たかはし・よしとき)さんの弟子になった忠敬さんは、自分で行った観測結果から、黒江町の自宅と浅草の暦局の緯度の差が1分と見ていた。これはGoogleマップでみると、黒江町(現在の江東区永代2丁目あたり)から浅草の暦局(現在の台東区浅草橋3丁目あたり)の間で、約3km。

▼そこで忠敬さんは、両地点の南北距離を正確に測定すれば、1分の距離が出せて地球の大きさも計算できる、と考えて師匠に提案する。
しかし、至時さんは「1分では小さすぎて正確な値が出せない。江戸から北海道ぐらいの距離を測る必要がある」と返事をする。1分の60倍が1度なので、度の単位で生じた誤差は分にすれば60倍に拡大する。さらに1分の距離から地球の距離を出すならば、21600倍することになる。元になるデータは正確なほうが良い。

▼5年後の1800年、忠敬さんは、北海道に行って測量する。そして子午線弧長1度を「27里余」と計算する。続く1801年と1803年の測量では「28.2里」と計算する。フランスから輸入した『ラランデ暦書』(1771)にも近い値が書かれており、二人で喜び合ったという。

▼さて、忠敬さん計算結果を「里」を3.93kmとして、1分の子午線弧長を求めてみた。式は、28.2〔里✖3.93km÷60結果、1.847kmになる。1海里1.852kmと比べて誤差5メートル! 

▼冒頭の「黒江町の自宅と浅草の暦局」の距離の測定から地球を測るアプローチから出発して、至時さんのアドバイスを得て、そのあと日本を縦走して測定した結果だ。

▼今日の人物:伊能忠敬(いのう・ただたか、1745 - 1818) 日本全国を測量して『大日本沿海輿地全図』を完成させた江戸時代の商人・天文学者・地理学者・測量家。江戸幕府天文方の高橋至時(たかはし・よしとき、1764 - 1804さんの弟子。

〔参考〕
有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。
平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E8%83%BD%E5%BF%A0%E6%95%AC
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E8%87%B3%E6%99%82

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