単位Jの分かりにくさをどうにかしたい:アルケーを知りたい(456)

今回の話題は(A)物理学。

▼物理では、電力の単位はW、電力量の単位はJを使う。
電気料金では単位にKwhを使い、Jは使ってない。ここから分かりにくさが生じる。日本の計量法は仕事・熱量・電力量の単位にJとKwh、どちらも使えると認めている。単位がごちゃついている。この対策は、使い手側(学習者)が単位変換できること。

▼単位変換プログラムは今まで何度かやった基本の形をもとに変換する数字を入れればできる。だから今日は省略。

▼まだもやっとした分かりにくさが残る。それを腑分けすると3つほど原因らしきものが出てくる。
一つ目は「仕事・熱量・電力量」という異分野の単位に同じJを使うこと。
二つ目は、単位同士を重ね合わせた組立単位が持つ複雑さ。
三つ目。ニュートンさん・ワットさん・ジュールさんらによる長年の実験と理論の結晶が単位に集約されたのは良いけど単位の意義が分かりにくくなったこと。

▼ジュールさんが手がけた実験を見ると、電磁気、仕事、熱が一体になっていた。多要素混合型だった。ただ最初の実験は分かりやすくて、ワットさんらが普及させた蒸気機関を超える新しい動力源を求める、という狙いで、ボルタ電池を使ってモータの実験をしていた。ここでは電気と磁気がテーマ。ただボルタ電池の限界が出て、ボルタ電池駆動のモータでは蒸気機関を超えられないことが分かる。
で、今度はボルタ電池で水中のニクロム線を加熱し、水の温度上昇を測る実験にシフトした。ここで熱量が加わる。その結果、Q=I*R2のジュールの法則を発見。
次に、熱はどこから生まれてきたのかを追求する実験に着手。水中の羽根車を回すというやつ。いまの教科書に出ている簡単なイラストからは想像できないほど緻密だった。何しろ華氏0.005度の変化が測定できたから。この精密な実験から、仕事量がどれだけの割合で熱に変わるのかという仕事当量を算出。

▼今回の結論。分かりにくいものには、それに触れる時間を増やすほうが良い、ということ。先人の挑戦の足跡をたどると、そんな簡単じゃないことが分かる。

▼今日の人物 ジュールさんの実験に興味を持ち共同研究したアイルランドの物理学者、ウィリアム・トムソンさん、通称ケルビン卿。
ウィリアム・トムソン  William Thomson 1824 - 1907 教育▽ケンブリッジ大学ピーターハウス 職業▽22歳からグラスゴー大学で自然哲学の教授 実績▽28歳でジュール=トムソン効果を発見。30歳で絶対温度目盛を導入、絶対温度ケルビンの祖。42歳で大西洋横断電信ケーブルの敷設に成功。人脈▽マイケル・ファラデーニコラ・カルノージェームズ・プレスコット・ジュールジョージ・ガブリエル・ストークス

〔参考〕
有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。
平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。
https://en.wikipedia.org/wiki/William_Thomson,_1st_Baron_Kelvin

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