万葉集巻第二143‐144番歌(岩代の崖の松が枝結びけむ人は)~アルケーを知りたい(1264)

▼143番歌は「帰りてまた見めむかも」と詠っている。けれど、タイトルは「哀咽しぶる歌」。だから「松が枝結びけむ人」が有間皇子が再び結び目を見られなかったのは分かっている。誰もが分かっていることを前提にしているのに、感慨が起る。なぜだろう。144番で「心も解けずいにしへ思ほゆ」と言っているので、有間皇子の扱い方に呑み込みにくいものがあったのだろう。

 長忌寸意吉麻呂、結び松を見て哀咽しぶる歌二首
岩代の崖の松が枝結びけむ人は 帰りてまた見めむかも 万143
*岩代の崖の松の枝を結んだ人は、帰ってまた御覧になれたのだろうか。

岩代の野中に立てる結び松 心も解けずいにしへ思ほゆ いまだ詳らかにあらず 万144
*岩代の野の中に立っている結び松よ。私の心もほぐれないまま昔のことを思っているよ。

【似顔絵サロン】長忌寸意吉麻呂 ながのいみきおきまろ ? - ? 持統・文武両朝の官人・歌人。渡来系。即興の和歌が上手。一二の目のみにはあらず五六三四(ごろくさむし)さへありけり双六の頭(さえ) 万3827














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=2

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