国際単位系(SI)のキログラムkilogram:アルケーを知りたい(463)

今回の話題は(A)物理学。

▼質量の物理単位は、キログラムkg

▼定義の今昔
1795年:大気圧下で氷の溶けつつある温度における水1リットルの質量
現在:プランク定数を十の三十四乗分の六・六二六〇七〇一五ジュール秒とすることによって定まる質量(計量単位令、別表第一、第二条関係二、質量、キログラム)6.62607015 × 10−34 J s(ジュール秒)

▼水1リットルの重さ(質量)は実感できる。今の定義は昔より正確だけど、反面、実感が伝わってきにくい。この定義は何を言っているのか、確かめてみよう。

▼6.62607015は、プランク定数 h のことである。これは1899年にドイツの物理学者マックス・プランクさんが黒体放射の研究から学会に提案した定数。

▼プランク定数が出てきたときの話を、物理学者のオットー・フリッシュさんが著書『何と少ししか覚えていないことだろう』で次のように描いている:ある同時代人は、プランクは理解しがたい事実を、光波が間欠的に放出されるという、さらに理解し難い仮説で「説明」した

▼フリッシュさんの本からもう少し引用しよう。
 プランクは、高温に熱せられた物体がいろいろな色の光を放出する割合を計算していたのだが、光がエネルギーの塊として放出されると仮定したときだけ、計算が可能となった。プランクはその塊を量子と呼んだ。その量子一個のエネルギーは光の波長に依存した。理論を観測と合わせるため、新しい自然定数を仮定しなくてはならなかった。プランクはそれをhと呼び、プランクの定数として知られるようになった。ある色の光波について、一秒間当たりの振れの数(振動数)にhを乗じたものが各量子のエネルギーの量を与えると仮定された。

▼プランク定数は2019年からジュール秒の単位がついて質量の定義になった。ここで現在のkg単位の分からなさの理由が分かる。基本単位の説明にSI派生単位のジュールが入ったからだ。このジュール単位は、エネルギー、仕事、熱量、電力量に関わって一筋縄ではいかない存在である。理解しがたい単位をさらに理解し難い単位で説明されてる感、これあり。

▼今日の人物 プランク定数を提出したドイツの物理学者
マックス・プランクさん(Max Karl Ernst Ludwig Planck, 1858 – 1947) 教育▽ベルリン大学で博士 職業▽ベルリン大学、カイザー・ヴィルヘルム研究所で教授 業績▽プランク定数プランクの法則、1918年ノーベル物理学賞 人脈▽ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(師匠)、グスタフ・キルヒホフ(師匠)、グスタフ・ヘルツ(弟子)、マックス・フォン・ラウエ(弟子)、リーゼ・マイトナー(弟子)

〔参考〕
有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。
平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。
オットー・フリッシュ著、松田文夫訳『何と少ししか覚えていないことだろう』吉岡書店、2003年。
https://en.wikipedia.org/wiki/Max_Planck

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