海面又は空中における長さの計量、海里①:アルケーを知りたい(488)

今回の話題は(A)物理学。

▼これまで国際単位系の基本単位や組立単位をいくつか見た。いまはキログラム原器やメートル原器を元にしていた時代とは違っている。どれをとってもたいへん厳密な決め方になっている。驚いた、そして少し寂しい。

▼これからは計量単位令で言うところの「特殊の計量」を見ていく。日常感があって親しみやすく面白いから。どんなものがあるかというと、今回の海里のほかに、宝石の「カラット」とか土地の「アールやヘクタール」とか血圧の「水銀柱ミリメートル」など。

▼で、今回は海里。エピソードが満載なので、何回かに分けることになりそう。
計量単位令の定義は次。海里メートルの千八百五十二倍
(計量単位令、別表第六(第五条関係)の一で定義されている海面又は空中における長さの計量)

▼海里の出し方は、理屈がすごく分かりやすい。地球は丸い。そこで地球の経線上の2地点間の距離(子午線弧長)を求めてその間の角度で割れば答えが出る、という理屈だ。フランスでは実測隊を繰り出し、日本では伊能忠敬さんが日本を歩いて測量した。共に近い数字を出した。

伊能忠敬さん:江戸の自宅と仕事場の緯度の差が1分と分かり、2地点間の距離から1度の距離を出した。しかし師匠の高橋至時さんから、1分から1度を求めるには60倍しないといけないから、それだけ誤差が大きくなるとダメ出し。これが蝦夷地での測量のきっかけになる。→アルケーを知りたい(437) 

フランスの天文学者でねこ座を提唱したジェローム・ラランドさん:先輩のラカーユさんらが測定した子午線弧長のデータを記した著書を執筆。この本が日本に渡る。伊能忠敬さんの師匠の高橋至時さんが苦労して読み解く。結果、フランスの子午線弧長と忠敬さんの実測データが一致するのを発見。二人で喜び合った。→アルケーを知りたい(438) 

フランスの天文学者、ニコラ・ルイ・ド・ラカーユさん:師匠のジャック・カッシーニさんが計算した子午線弧長を修正するため、2年かけて測定を行った。フランス科学アカデミーはその結果を認め、メートル法の基礎になる。星座の名称に、けんびきょう座、コンパス座、じょうぎ座等を提案。→アルケーを知りたい(439) 

▼今日の人物 イギリスも地球の寸法の算出に熱心だった。そのメンバーのひとり天文学者の
ネヴィル・マスケリンさん(Nevil Maskelyne 1732 – 1811)教育▽ケンブリッジ大学セント・キャサリンズカレッジ卒業 職業▽イングランド国教会で牧師、グリニッジ天文台で5代目台長、王室天文官ほか 実績▽月距法(月の動きの観察から地球の経度を計測する方法)の実用化 人脈▽ジョン・ハリソンさん(経度の測定に必要な船舶時計クロノメーターのパイオニア。ハリソンさんは経度法の立場だったので、月距法を押すマスケリンさんのライバル)→アルケーを知りたい(428)、トビアス・マイヤーさん(ドイツの天文学者。子午線弧長の測定に経度法を採用。マスケリンさんにとってのライバル)

〔参考〕
有山智雄et al.『中学総合的研究 理科〔四訂版〕』旺文社。
平尾淳一『総合的研究 物理』旺文社。
https://en.wikipedia.org/wiki/Nevil_Maskelyne

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