ボイルの法則~ボイル:アルケーを知りたい(536)

今回の話題は(A)物理学。

ボイルの法則は、例えば、注射器型のシリンダーの出口をふさいでピストンに力を加えて押すと容積が小さくなる。逆にピストンを引っ張ると容積が増える。気体の体積と圧力の積は一定、別の言い方をすると、気体の体積は圧力と反比例する、というもの。

▼ボイルが気体に関心を持ったきっかけはゲーリケの真空ポンプだ。ゲーリケは、半球を合わせて真空ポンプで中を真空にし、馬で引っ張っても離れないという、ビジュアル的にも映えるデモを行っていた。このインパクトがヨーロッパからイギリスのボイルまで伝わった。

▼ボイルは、真空ポンプ面白い、作ってみよう、ということでロバート・フック(22)を助手にしてプロジェクト開始。このときボイル30歳。着手して2年で完成し、気体の計測実験やデモを行う。3年目の1660年、ボイルは研究成果を出版。この一連の間、フックは製作だけでなく、実験、計測、人前でのデモなどで大活躍した。

▼1660は王政復古の年。オランダに亡命していたチャールズ2世を軍艦で迎えに行く一団にボイルも加わっていた。こんな大騒動の最中にボイルは真空ポンプ実験の一連を発表している。アタマの切り替えの上手さ!

▼ボイルはロンドン理学協会あるいはInvisible Collegeと呼ばれる私的な研究グループに参加していた。こういうグループはちょっと秘密っぽくて良い。けど、後で王立協会という大権威になるので、発展は大いに喜ばしいことであるものの、その前段階の興味関心を同じくして集まった人の会合に魅力がある。しかも名前がインビジブル=見えない、だからなおさら。ネーミングで惹かれるグループとしては百年後に出てくるルナ・ソサイエティLunar Societyがある。

▼ロバート・ボイル Robert Boyle 1627 - 1691 アイルランド・リズモア出身の化学者、錬金術師。
【時代環境】1642、清教徒革命。ボイルの兄が戦死
1660、王政復古
1665、ペスト流行
1666、ロンドン大火

【教育】家庭教師。イートン・カレッジ卒業
【職業】資産家
【業績】
1661、アリストテレスの4元素説(空気、水、土、火)を批判する著作『懐疑的化学者』を発表。近代化学の祖とされる
1662、ボイルの法則を発表

【ネットワーク】
ガリレオ・ガリレイ Galileo Galilei 1564 - 1642 ボイル(14)は、ガリレオが死去する直前の1641の冬にフィレンツェで師事した。ガリレオの死後は『天文対話』から学んだ。

マラン・メルセンヌ Marin Mersenne 1588 - 1648 「メルセンヌ数」で有名なフランスの数学者。ヨーロッパの学者のネットワークの中心だった人物。ボイルはこのネットワークに入っていた。

オットー・フォン・ゲーリケ Otto von Guericke 1602 - 1686 ドイツ・マグデブルグの貴族、物理学者、政治家。1650、真空ポンプを発明 →アルケーを知りたい(531)

ロバート・フック Robert Hooke 1635 - 1703 ボイルの助手として、ゲーリケの真空ポンプのコピー「machina Boyleana」を製作。→アルケーを知りたい(534)

ニコラ=ルイ・ド・ラカーユ Nicolas-Louis de Lacaille 1713 - 1762 フランスの天文学者。真空ポンプを記念して「ポンプ座」を設定した。ポンプ座のほかに設定した星座は次:がか座、けんびきょう座、コンパス座、じょうぎ座、ちょうこくぐ座、ちょうこくしつ座、テーブルさん座、とけい座、はちぶんぎ座、ぼうえんきょう座、レチクル座、らしんばん座、ろ座。

ジャック・シャルル Jacques Charles 1746 - 1823 フランスの物理学者、数学者、気球乗り。ボイル=シャルルの法則で有名。

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〔参考〕
『理科年表2022』
https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Boyle

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