方解石の複屈折の発見~ラスムス・バルトリン:アルケーを知りたい(538)

今回の話題は(A)物理学。

方解石の複屈折は教科書では写真入りで紹介される光の屈折の典型例。これを発見したのがデンマークのラスムス・バルトリン。

▼分からないことがある。ラスムスは10代の間、ヨーロッパを遊学している。この時期のヨーロッパでは80年戦争や30年戦争が起きている。戦争が起こっていても遊学できた、というのはどういう感じだったのだろう? 危なくて遊学なんかさせられないと親は思わないのだろうか。バルトリンの実家は学者一族なので、学問研鑽のため、他国に危険を避けて旅をするノウハウの伝承があったのだろうか。

▼もうひとつ分からないこと。医師で文法学者のラスムスが複屈折を発見して報告したこと。物理学者の仕事でしょう、と思う内容だ。今の専門分野の目で400年前の人たちの仕事を見ると、捉えにくいことがたびたび出てくる。今回もそうだ。専門の看板の下で仕事をするというより、興味があることを追いかけていたようだ。

ラスムス・バルトリン Rasmus Bartholin 1625 - 1698
デンマークの医師、文法学者
【時代環境】1618 - 1648 ~ 30年戦争(カトリックvsプロテスタント戦争@ドイツ)
1643 - 1645 ~ トルステンソン戦争(30年戦争中のデンマークvsスウェーデンの局地戦)
1657 - 1660 ~ カール・グスタフ戦争(デンマークvsスウェーデン間の戦争。デンマークは敗北して領土を失いヨーロッパの小国になる)
1675 - 1679 ~ スコーネ戦争(デンマークvsスウェーデン間の領土争い。フランスの仲裁で引き分け)

【教育】ヨーロッパを10年間遊学、1647(22)コペンハーゲン大学で修士。1654(29)パドヴァ大学で博士。
【職業】コペンハーゲン大学で教授、幾何学と医学。
【業績】1657(32)デンマーク語の文法書『 De studio lingvæ danicæ 』をラテン語で執筆、発表。
1669(44)方解石による光線の複屈折を発見。当時は現象の説明がつかず。130年後、トマス・ヤングによる光の波動説で説明可能となった。

【ネットワーク】
トーマス・バルトリン Thomas Bartholin  1616 – 1680 ラスムスの兄。人間のリンパ系を発見したデンマークの医師。

トマス・ヤング Thomas Young  1773年6月13日 - 1829年5月10日 イギリスの物理学者。1805、ヤングの実験を行い光の波動説を主張。

【似顔絵サロン】
















〔参考〕
『理科年表2022』
https://en.wikipedia.org/wiki/Rasmus_Bartholin

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