1907、ルテチウム~アーバン(仏):アルケーを知りたい(717)
今回は化学。
Charles James▼ルテチウム:lutetium。原子番号 71。元素記号 Lu。銀白色の金属。用途は、鉱物や隕石の年代決定や化学反応の触媒。名前の由来はパリの古いローマ風の呼び方でラテン語のLutetia Parisiorum。
▼アーバンのここが面白い:複数の化学者が同時期に同じ発見をするのは時々ある話。ルテチウムもその例。発見した化学者は仏のアーバン、墺のヴェルスバッハ、米のジェームスの三名。発見後の3人の振る舞い。アーバンとヴェルスバッハは優先順位で論争、ジェームスはこの論争に入らずルテチウムの精製を目指す。1907年に始まった論争は1949年に決着がつくまで42年間続き、化学史上最長の優先権争いとなった。42年も続いたので、ドイツ語圏ではヴェルスバッハが命名したカシオペウムが使われていた。国際原子量委員会が下した裁定は、報告書を先に書いたアーバンに優先権を認める、というもの。この結果が出たとき3名は物故者。
▼アーバン Georges Urbain 1872年4月12日- 1938年11月5日
フランスの化学者。
【人物】?
【教育】1894(22) ESPCI パリとソルボンヌ大学を卒業。
【活動/業績】
1894-95(22-27) ESPCI パリなど複数の研究所で研究院。
1899-1904(27-32) 企業でアークランプの光源研究。
1906, 08(34, 36) ソルボンヌ大学で教員。
1907(35) ルテチウムを発見。
1914-18(42-46) WWI。陸軍省で実験室長。
1928-(56-) ソルボンヌ大学で一般化学の教授。
【ネットワーク】
マリニャック Jean Charles Galissard de Marignac 1817年4月24日 - 1894年4月15日 スイスの化学者。1878(61) イッテルビウム発見。▼アーバンはイッテルビウムから2 つの成分分離し「ネオイッテルビア」と「ルテシア」と命名。1909年、原子質量委員会がルテシアをルテチウムとして採用。
ヴェルスバッハ Carl Auer von Welsbach 1858年9月1日 - 1929年8月4日 オーストリアの化学者。1885(27) ネオジム発見。▼1907(49) アーバンとは独立してイッテルビウムから新元素を分離しカシオペウムと命名。アーバンと発見の優先順位の論争になる。優先権と命名権をアーバンに譲った。
ジェームス Charles James 1880年4月27日 - 1928年12月10日 米の化学者。▼1906-07(26-27) ルテシアを独立して発見、優先順位論争には加わらず、高度精製したルテシアの供給元になった。
【似顔絵サロン】
〔参考〕
『理科年表2022』
https://en.wikipedia.org/wiki/Georges_Urbain
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