藤原清輔の歌~アルケーを知りたい(991)

▼百人一首の100番から戻って85番まで「
承久の乱つながり」の視点で見てきた。
▼詠み手のつながり方には、親族・師弟・仲間があって、星型ネットワークのようになる。
▼84番歌の藤原清輔から順に、人物のキャラを見ながら、月・老い・死をテーマにした歌を探して行く。

藤原 清輔 ふじわら の きよすけ 1104年 - 1177年7月17日(73歳) 平安時代末期の公家・歌人。
▼清輔は人麻呂レスペクトの歌道師範家の三代目、そしてプロの歌詠み。

▼キャリアとネットワーク
1144(40) 崇徳院(77番)の命で『詞花集』を撰じる父・藤原顕輔(79番)を手伝う。
1150(46) 崇徳院主催の『久安百首』に参加。歌学書『奥義抄』を崇徳院に献上。
1153(49) 『人丸(3番)勘文』を著す。
1155(51) 父から歌道師範家の六条藤家を引き継ぐ。
1160(56) 太皇太后宮大進清輔歌合を開催。藤原敦頼(82番)を招く。
1165(61) 九条良経(91番)の父親・九条兼実(16歳)が和歌の弟子入り。
1172(68) 暮春白河尚歯会和歌会を開催。藤原敦頼を招く。


▼藤原清輔の和歌と*勝手に解釈
はるばると曇りなき世をうたふなり 月出が崎のあまの釣舟
月出が崎で釣り船を見たら、はるばると曇りのない世を歌ってみたい気分だ。

冬枯の森のくち葉の霜のうへに おちたる月の影のさむけさ
*冬枯れた森に敷き積もった朽ちた葉に霜が降りている、月影が寒さを際立たせている。

雲ゐよりちりくる雪はひさかたの 月のかつらの花にやあるらむ
*天から雪が降ってくる、まるで月の桂から落ちてくる花のようではないか。

妙の雪吹きおろす風越の 峯より出づる冬の夜の月
*風越の峯から雪が吹き下ろされてくる。峯を見ると冬の夜の月が出ている。

月影はさえにけらしな神垣の よるべの水もつららゐるまで
*寒さで一段と月影が冴えている。神垣の付近の水も凍っている。

更けにける我が世の秋ぞあはれなる かたぶく月はまたも出でなむ
*私の人生の秋も深まってきた、趣も増すってことよ。また傾いて月が出てきた。

夜とともに山の端いづる月影の こよひ見そむる心地こそすれ
*夜になると山から月が出てくる。今夜初めて見る気がするのが不思議。

ゆく駒のつめの隠れぬ白雪や 千里のそとにすめる月かげ
*馬の蹄に踏まれない白い雪のように、月の光が地面にさしている。

夜もすがら我をさそひて月影の はては行方もしらで入りぬる
*一晩中月を眺め過ごしてしまった。でもどこに沈んだのだろう。

今よりは更けゆくまでに月は見じ そのこととなく涙落ちけり
*今からは夜遅くまで月を見るのはやめようと思う。なんだか涙がこぼれてくる。

七十路にみつの浜松老いぬれど 千代の残りは猶ぞはるけき
*七十代になった。老いたものだ。けど、寿命はまだまだあるぞ。

年へたる宇治の橋守こととはむ 幾世になりぬ水のみなかみ
*年を重ねた宇治の橋守にお尋ねしよう、宇治川にお住まいになってどれくらいになりますか。

世の中は見しも聞きしもはかなくて むなしき空の煙なりけり
*世の中のことは見ても聞いてもはかなくて、空に立ち上って消える煙のように空しい。

山人の昔の跡をきてみれば むなしき床をはらふ谷風
*山の奥に残った古い家に入ると、空しくも谷風が床を吹き抜けていた

ながらへばまたこの頃やしのばれむ 憂しと見し世ぞ今は恋しき(百人一首84番歌)
*この先まだ生きながらえて行けば今のことも恋しくなるのだろう。過去、憂しと思ったことも今は恋しいから。

人麿の墓に卒都婆たて侍るとてかきつけ侍りける
世をへても逢ふべかりける契りこそ 苔の下にも朽ちせざりけれ
*時代を経て出会う人と人の縁。故人であってもその縁が朽ちることはない。

【似顔絵サロン】





















































































〔参考〕
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E6%B8%85%E8%BC%94
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/kiyosuke.html#VR

コメント

このブログの人気の投稿

大伴旅人の万葉集459番歌~アルケーを知りたい(1092)

大伴旅人の万葉集876-879番歌~アルケーを知りたい(1117)

大伴旅人の万葉集577番歌~アルケーを知りたい(1097)