大伴旅人の万葉集333-335番歌~アルケーを知りたい(1086)

▼今回の歌は、前回の続き、大宰府で開いた宴会で詠んだ歌の2の2。万葉集に収められた旅人の歌のうち二番目に出てくる作品。「つばらつばらにもの思ふ」はナイスなフレーズ。
▼このとき旅人は5首の歌を詠んでいる。前回に続く今回は、残りの3首と満誓及び山上憶良の歌

▼大伴旅人の和歌と*勝手に解釈
帥大伴卿(そちおおとものまへつきみ)が歌五首(のうちの後の三首)
浅茅原つばらつばらにもの思へば 古りにし里し思ほゆるかも 万333
*つらつらともの思いしていますと、古びた里を思い出します。

忘れ草我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため 万334
*私の服の紐に憂いを忘るという草を結んでいます。それも香具山の古びた里を忘れたいがためです。

我が行きは久にはあらじ夢のわだ 瀬にはならずて淵にしありこそ 万335
*私の大宰府在任は長くはないでしょう。夢のわだと呼ばれる象の小川が浅瀬にならず、深い淵であって欲しいものです。

▼旅人のこの歌の次に、沙弥満誓が「しらぬひ筑紫の綿は身に付けて いまだは着ねど暖けく見ゆ(万336)」と続ける。満誓が宴席の空気を変えようとする気配がある。
▼そして最後に山上憶良が「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむぞ(万337)」で宴会の緊張感をさらにほぐして会を閉じる。
▼小野老朝臣、大伴四綱、そして旅人、満誓、憶良の歌が息をのむドラマのよう。

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〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/tabito2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%97%85%E4%BA%BA

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