大伴旅人の万葉集568-571番歌~アルケーを知りたい(1094)

▼今回の歌は、帰京が決まった旅人の送別会「梅花の宴」が開かれたときに参加者が詠んだ歌4首。
▼紀貫之は古今和歌集の仮名序で和歌の機能として「心々を見たまひて、賢し、愚かなりとしろしめしけむ」と書いている。旅人も送別会で歌を披露する人々の人柄を見たのだろう。人々もまたお互いの和歌に人柄を見たのだろう。

大宰帥大伴卿、大納言に任(ま)けらえて京に入るときに臨み、府の役人ら、卿を筑前の国蘆城(あしき)の駅家(うまや)にて餞する歌四首。
み崎みの荒磯(ありそ)に寄する五百重波(いほへなみ) 立ちても居ても我が思へる君 万568
右の一首は筑前掾門部連石足(ちくぜんのじょう かどべのむらじ いそたり)
*荒磯に繰り返し寄せる波のように、立っていても座っていても思い続ける貴方様であります。

韓人の衣染むといふ紫の 心に沁みて思ほゆるかも 万569
*韓人が布を染める紫のように私の心に貴方様が沁みております。

大和へ君が発つ日の近づけば 野に立つ鹿も響(とよ)めてぞ鳴く 万570
右の二首は、大典麻田連陽春(だいてん あさだのむらじ やす)。
*大和の都に貴方様が旅立つ日が近づくと、野にいる鹿も声を響かせて鳴いています。

月夜よし川の音清しいざここに 行くも行かぬも遊びて行かむ 万571
右の一首は防人佑大伴四綱(さきもりのすけ おほとものよつな)。
*今夜はよい月夜、川の音もすがすがしい。大和に行く人も行かない人も、ここで遊んで行きましょう。

【似顔絵サロン】
藤原 宇合(ふじわら の うまかい) 694 - 737 43歳 長屋王と対立した藤原四兄弟の三男。兵士を率いて長屋王邸を包囲した。藤原式家の祖。長屋王の変の8年後、天然痘で死去。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/tabito2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%97%85%E4%BA%BA

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