大伴旅人の万葉集577番歌~アルケーを知りたい(1097)

▼今回の歌は、旅人が京都に戻る途中で接待してくれた大原高安に贈った歌。
高安「人にあげちゃダメだよ、君が着るんだよ」と言うために、その「君」のことを「網を引く難波壮士=漁師」と表現したのが面白い。
▼高安には「沖辺行き辺を行き今や妹がため 我が漁れる藻臥束鮒 万625」という歌があって、実際に魚を獲っていた様子がうかがえる。
隠岐に流された小野篁の思ひきや鄙のわかれにおとろへて 海人の縄たきいざりせむとは 古今961」という歌があるのを思い出した。「俺ともあろう者がここで漁師の真似事をするとは思わなんだわ」と自分を嘆いた歌だ。
▼ここからすると難波壮士というワードを出すことで、旅人が釣り好きの高安を親しみを込めながらからかっている風情もある。気の置けない間柄だったのだろう。

 大納言大伴卿、新袍(しんほう)を摂津大夫(せっつのかみ)高安王(たかやすのおほきみ)に贈る歌一首
我が衣人にな着せそ網引(あびき)する 難波壮士(なにはをとこ)の手には触るとも 万577
*私が贈った上衣はほかの人に着せないようにしてくださいね。網を引く難波壮士(高安王のこと)の手に触れることがあっても。

【似顔絵サロン】藤原 不比等 659 - 720 61歳 中臣鎌足の子。藤原四兄弟の父親。





























〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/tabito2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%97%85%E4%BA%BA

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