大伴旅人の万葉集815-822番歌~アルケーを知りたい(1104)

▼730年、大宰府帥の旅人が開いた梅花の宴で参加者が詠んだ歌32首。4回に分けて見て行く。
▼九州の出身者であれば、梅花の宴の参加者の肩書に出る筑前、豊後、筑後などの地名を見ておおっと思うことでしょう。私は大分市出身なので豊後が来ると、理由なく嬉しい。下記に豊後守大伴大夫が登場する。
▼最初の6名が詠んだあと沙弥満誓が1首詠み、続いて旅人の1首が来る。この旅人の1首で全8首がひとまとまりになる。
▼この時代の人は花見のときにやたら枝を折る。今の感覚でいうと、それよくないすよ、という気持ちになる。枝を折って何にするかというとかんざしにして頭に乗っける。元気を貰う意味合いがあるらしい。気持ちはよく分かる。

 梅花の歌三十二首 幷せて序
天平二年の正月の十三日に、帥老の宅に集まりて、宴会を申ぶ。
時に、初春の月にして、気淑く風ぐ。
海は鏡前の粉を披く、蘭は珮後(はいご)の香を燻らす。
しかのみにあらず、曙の嶺に雲移り、松は羅を掛けて蓋(きぬがい)を傾く、夕の岫(くき)に霧結び、島はうすものに封(と)ぢらえて林に迷ふ。
庭には舞ふ新蝶あり、空には帰る故雁あり。
ここに、天を蓋にして地を坐にし、膝を促け觴(さかづき)を飛ばす。
言を一室の裏に忘れ、矜を煙霞の外に開く。
淡然自ら放し、快然自ら足る。
もし翰苑にあらずは、何をもちてか情を攄(の)べむ。
詩に落梅の篇を紀す、古今それ何ぞ異ならむ。
よろしく園梅を賦して、いささかに短詠を成すべし。

正月立ち春の来らばかくしこそ 梅を招きつつ楽しき終へめ 大弐紀卿(きのまへつきみ) 万815
*正月になり春を迎えましたので、こんなふうに皆で梅を眺めて楽しく過ごしましょう。

梅の花今咲けるごと散り過ぎず 我が家の園にありこせぬかも 少弐小野大夫 万816
*梅の花よ、今咲いている調子で散り過ぎないようにして、この庭にいてください。

梅の花咲きたる園の青柳は かづらにすべくなりにけらずや 少弐粟田大夫 万817
*梅の花が咲いている庭には青柳もいる。これも頭に乗っけるかづらになりそうです。

春さればまづ咲くやどの梅の花 ひとり見つつや春日暮らさむ 筑前守山上大夫 万818
*春になるとすぐに咲くのが庭の梅の花です。ひとりで眺めて春の日を過ごしたいものです。

世の中は恋繁しゑやかくしあらば 梅の花にもならましものを 豊後守大伴大夫 万819
*世の中は恋煩いなど辛いことが多いので、梅の花になってしまいたい、と思います。

梅の花今盛りなり思ふどち かざしにしてな今盛りなり 筑後守葛井大夫 万820
*梅の花は今が盛りと思う仲間が集まり、花かんざしを頭に乗っけて宴たけなわです。

青柳梅との花を折りかざし 飲みての後は散りぬともよし 笠沙弥 万821
*青柳や梅の花を折ってかんざしにして大いに飲んだ後、花は散ってもよろしい。

我が園に梅の花散るひさかたの 天より雪の流れ来るかも 主人 万822
*我が家の庭で梅の花が散っている。遠い天から降ってくる雪のようです。

【似顔絵サロン】中大兄皇子、後の天智天皇 626 - 672 46歳 旅人が生まれる20年前の645年に乙巳の変を実行。百人一首1:秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/tabito2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%97%85%E4%BA%BA

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