大伴旅人の万葉集853-854番歌~アルケーを知りたい(1110)

▼物語になっている序と和歌2首。
万葉集初心者の私にはどう捉えてよいか分からない作品なので、旅人はこういう作品も作っていたんだ、と思いながら味わいます。

 松浦川に遊ぶ 序
余、たまさかに松浦の県に往きて逍遥し、いささかに玉島の潭に臨みて遊覧するに、たちまちに魚を釣る娘子らに値ひぬ。
花容双びなく、光儀匹ひなし。
柳葉を眉の中に開き、桃花を頬の上に発く。
意気は雲を凌ぎ、風流は世に絶れたり。
僕、問ひて「誰が郷誰が家の子らぞ、けだし神仙にあらむか」といふ。
娘子ら、みな咲み答へて「児等は漁夫の舎の児、草庵の微しき者なり。
郷もなく家もなし。
何ぞ称り云ふに足らむ。
ただ性水に便ひ、また心山を楽しぶ。
あるいは洛浦に臨みて、いたづらに玉魚を羨しぶ、あるいは巫峡に臥して、空しく煙霞を望む。
今たまさかに貴客に相遭ひ、感応に勝へず、すなはち款曲を陳ぶ。
今より後に、あに偕老にあらざるべけむ」といふ。
下官、対へて「唯々、敬みて芳命を奉はらむ」といふ。
時に、日は山の西に落ち、驪馬去なむとす。
つひに懐抱を申べ、よりて詠歌を贈りて曰はく、

あさりする海人の子どもと人は言へど 見るに知らえぬ貴人の子と 万853
*漁をする海人の子だと人は言うのだけれど、身分を隠した貴人のお子とお見受けしました。

 答ふる詩に曰はく、
玉島のこの川上に家はあれど 君を恥しみあらはさずありき 万854
*家は玉島のこの川上にございますけれど、貴方様を見て恥ずかしいので黙っておりました。

【似顔絵サロン】旅人の43歳年下のドイツの人。カール・マルテル Karl Martell 688 - 741 53歳 フランク王国の宮宰。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/tabito2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%97%85%E4%BA%BA

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