山上憶良の万葉集337番歌~アルケーを知りたい(1130)

▼大伴旅人が官人・小野老の昇進を祝う宴を開いた。5名が参加し、順番に歌を披露。憶良が最後に締めとなる歌を詠んだ。それが「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ」で有名な337番。
宴の流れはこうだ。小野老と大伴四綱が奈良の話ばかりする、大人たる旅人は二人の奈良の話を受けて4つの歌を詠む、5つめで大宰府に触れる。
▼続いて沙弥満誓が筑紫の話に転換し奈良話を終わらせる、そして最後に憶良が良い感じで閉会に導く。旅人・満誓・憶良ら筑紫歌壇の連係プレイがヨシ。
▼小野老の328番歌から順に見て行こう。

 小野老朝臣
あおによし奈良の都は咲く花の にほふがごとく今盛りなり 万328
*奈良の都は、いま桜が匂うがごとく満開であります。

 大伴四綱
やすみしし我が大君の敷きませる 国の中には都し思ほゆ 万329
*我らが大君があまねく治めておられる国の中では都が一番懐かしく思います。
藤波の花は盛りになりにけり 奈良の都を思ほすや君 万330
*大宰府の藤の花が盛りです。貴方様も奈良の都を思っていらっしゃるのではありませんか。

 大伴旅人
我が盛りまたをちめやもほとほとに 奈良の都を見ずかなりなむ 万331
我が命も常にあらぬか昔見し 象の小川を行きて見むため 万332
浅茅原つばらつばらにもの思へば 古りにし里し思ほゆるかも 万333
忘れ草我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため 万334
我が行きは久にはあらじ夢のわだ 瀬にはならずて淵にしありこそ 万335
 沙弥満誓
しらぬひ筑紫の綿は身に付けて いまだは着ねど暖けく見ゆ 万336
*ここ筑紫産の真綿はまだ身に付けておりませんけど、きっと暖かいものでしょうね。

 山上憶良臣、宴を罷る歌一首
憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむぞ 万337
*さてさて憶良らはこれで退出することにいたします。家では子供が寂しがって泣いているでしょう、その母親も私めを待っているでしょうから。

【似顔絵サロン】憶良(660-733)の同時代人。元明天皇 げんめいてんのう 661 - 721 60歳。第43代天皇。文武天皇の母親。藤原不比等を重用。















〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%8A%E6%86%B6%E8%89%AF
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/okura2.html

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