山上憶良の万葉集894-896番歌~アルケーを知りたい(1140)

▼憶良が遣唐使の旅の安全を祈って作った「好去好来」の歌。タイトルの好去好来という語呂が良き。
▼この作品で憶良は日本を「言霊の幸はふ国」と呼んでいる。言霊の幸はふ国にいる自分だから、言葉の選び方、使い方では前向き・明るい・和するを心がけねばと思ふ。

 好去好来の歌一首 反歌二首
神代より 言ひ伝て来らく 
そらみつ 大和の国は 皇神の 厳しき国 言霊の幸はふ国と 語り継ぎ 言い継がひけり 
今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知りたり 
人さはに 満ちてはあれども 
高光る 日の大朝廷 神ながら 愛での盛りに 
天の下 奏したまひし 家の子と 選ひたまひて 
勅旨(おほみこと)<反(かへ)して「大命」といふ> 戴き持ちて 
韓国の 遠き境に 遣はされ 罷りいませ 
海原の 辺にも沖にも 神づまり うしはきいます 
もろもろの 大御神たち 船舳に<反して「ふなのへに」といふ> 導きまをし 
天地の 大御神たち 大和の 大国御魂 
ひさかたの 天のみ空ゆ 天翔り 見わたしたまひ 
事終り 帰らむ日には またさらに 
大御神たち 船舳に 御手うち懸けて 
黒縄を 延へたるごとく あちかをし 
値嘉(ちか)の崎より 大伴の 御津の浜びに 直泊てに 
御船は泊てむ 障みなく 幸くいまして 早帰りませ 万894

 反歌
大伴の御津の松原かき掃きて 我れ立ち待たむ早帰りませ 万895
*御津の松原をきれいに掃き清めて、私たちは立って待っております、早くお帰りください。

難波津に御船泊てぬと聞こえ来ば 紐解き放けて立ち走りせむ 万896
*難波津に船が着いたと聞けば、嬉しくて飛び上がって喜ぶことでしょう。

 天平五年の三月の一日に、良が宅にて対面す。
 献るは三日なり。 山上憶良 謹上
 大唐大使卿 記室

【似顔絵サロン】憶良(660-733)の同時代人。舎人親王 とねりしんのう 676 - 735 59歳。天武天皇の皇子。政治家・歌人。ぬば玉の夜霧ぞ立てる衣手の 高屋の上にたなびくまでに 万1706














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%8A%E6%86%B6%E8%89%AF
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/okura2.html

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