大伴旅人の万葉集960-962番歌~アルケーを知りたい(1121)

▼最初の2首は、旅人が遠く離れた都や失った妻を思って詠んだ歌。
▼続く1首は、良い馬を調達する役割の大伴道足が大宰府にやってきたとき、旅人が饗応の席を設けた。そのとき参加者たちに歌を詠むよう請われた葛井連広成が、自分などにはとてもと遠慮する歌。歌で返しているのがいとをかし。

 帥大伴卿、遥かに吉野の離宮を思ひて作る歌一首
隼人の瀬戸の巌も鮎走る 吉野の滝になほ及かずけり 万960
*隼人の瀬戸の大渦の激しい流れも、鮎が跳ねる吉野の滝にはなお及ばない。

 帥大伴卿、次田の温泉に宿り、鶴の声を聞きて作る歌一首
湯の原に鳴く葦鶴は我がごとく 妹に恋ふれや時わかず鳴く 万961
*湯の原で鳴いている葦鶴。私のように妻を恋しがって時を分かたず鳴いている。

 天平二年庚午に、勅して 擢駿馬使(てきしゅんめし) 大伴道足宿禰を遣わす時の歌一首
奥山の岩に苔生し畏くも 問ひたまふかも思ひあへなくに 万962
*奥山の岩に苔が生しているように畏れ多く感じておりますのに、私めに歌を詠むよう仰せでしょうか、とても思いつきません。
 右は、勅使大伴道足宿祢に帥の家にして響す。
この日に、会集ふ衆諸、駅使葛井連広成を相誘ひて、「歌詞を作るべし」といふ。
その時に、広成声に応へて、則ちこの歌を吟ふ。

【似顔絵サロン】旅人(665-731)の同時代人。道慈 どうじ ? - 744 奈良時代の僧。山上憶良と同じ時期に遣唐使に加わった。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/tabito2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E6%97%85%E4%BA%BA

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