柿本人麻呂の万葉集131-134番歌~アルケーを知りたい(1162)

▼歌の題に出てくる「石見の国(いわみのくに)」とは島根県の西の地域。「角の浦み」は島根県江津市。131番歌の「高角山」は江津市にある山で人丸神社もあるという。
▼長歌の最後の「靡けこの山」の響きがカッコいい。

 柿本朝臣人麻呂、石見の国より妻に別れて上り来る時の歌二首 幷せて短歌
石見の海 角の浦みを 
浦なしと 人こそ見らめ 
潟なしと<一には「磯なしと」といふ> 人こそ見らめ 
よしゑやし 浦はなくとも 
よしゑやし 潟は<一には「磯は」といふ>なくとも 
鯨魚取り 海辺を指して 
和田津の 荒磯の上に 
か青く生ふる 玉藻沖つ藻 
朝羽振る 風こそ寄らめ 
夕羽振る 波こそ来寄れ 
波の共 か寄りかく寄る 
玉藻なす 寄り寝し妹を<一には「はしきよし妹が手本を」といふ> 
露霜の 置きてし来れば 
この道の 八十隈ごとに 
万たび かへり見すれど 
いや遠に 里は離りぬ 
いや高に 山も越え来ぬ 
夏草の 思ひ萎えて 
偲ふらむ 妹が門見む 
靡けこの山 万131

 反歌二首
石見のや高角山の木の間より 我が降る袖を妹見つらむか 万132
*石見の高角山の木の間から、私が手を振る姿を妻は見ているだろうか。

笹の葉はみ山もさやにさやげども 我れは妹思ふ別れ来ぬれば 万133
*笹の葉は山でさやさやとしているけど、私は妻のことを思っている、妻と別れて来たので。

 或本の反歌に曰はく
石見にある高角山の木の間ゆも 我が袖振るを妹見けむかも 万134
*石見の高角山の木の間から私が袖を振るのを妻は見ただろうか。

【似顔絵サロン】柿本人麻呂(660-724)の同時代人。元明天皇 げんめいてんのう 661 - 721 第43代天皇。持統天皇の妹。文武天皇の母親。藤原不比等を重用。ますらをの鞆の音すなり物部の 大臣(おほまへつきみ)楯立つらしも 万76














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetailLink?cls=d_utabito&dataId=201
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%BF%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E9%BA%BB%E5%91%82
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/hitomaro2_t.html

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