山上憶良の万葉集1716番歌~アルケーを知りたい(1154)

▼今回は、万葉集第九巻、雑歌に収められた歌群にある憶良の歌。この群は海で詠んだ5首の歌からなっており、2番目が憶良の作。

 槐本(つきのもと)が歌一首
楽浪の比良山風の海吹けば 釣りする海人の袖返る見ゆ 万1715
*楽浪(ささなみ)の比良山からの風が海に吹くと釣りをしている海人の袖が翻るのが見える。

 山上(憶良)が歌一首
白波の浜松の木の手向けくさ 幾代までにか年は経ぬらむ 万1716
 右の一首は、或いは「川島皇子の御作歌」といふ。
*白浪が打ち寄せる浜の松の木に手向けの草が結ばれている。どれくらい年が経つものだろう。

 春日が歌一首
三川の淵瀬もおちず小網さすに 衣手濡れぬ干す子はなしに 万1717
*三川の淵と瀬に網を仕掛けていると袖が濡れてしまったよ、乾かしてくれる人がいないのに。

 高市が歌一首
(あども)ひて漕ぎ去にし舟は高島の 安曇(あど)の港に泊(は)てにけむかも 万1718
*漕ぎ手が声を合わせて漕ぎ去った舟は、今頃は高島の安曇の港に着いたかも。

 春日蔵が歌一首
照る月を雲な隠しそ島蔭に 我が舟泊てむ泊まり知らずも 万1719
 右の一首は、或本には「小弁が作」といふ。或いは姓氏を記せれど名字を記すことなく、或いは名号を稱へれど姓氏を稱はず。しかれども、古記によりてすなはち次をもちて載す。すべてかくのごとき類は、下みなこれに倣へ。
*雲よ、照っている月を隠さないでおくれ。島蔭に我われの舟を泊める先が分からないので。

【似顔絵サロン】憶良(660-733)の同時代人。王 昌齢 おう しょうれい 698 - 755 57歳。唐の詩人。西宮夜静かにして百花香り 珠簾を捲かんと欲すれば春恨長し 斜めに雲和(弦楽器)を抱いて深く月を見れば 朦朧たる樹色に昭陽宮を隠す














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%8A%E6%86%B6%E8%89%AF
https://art-tags.net/manyo/poet/okura.html

コメント

このブログの人気の投稿

万葉集巻第二147‐149番歌(天の原振り放け見れば大君の)~アルケーを知りたい(1266)

万葉集巻22番歌(常にもがもな常処女)~アルケーを知りたい(1242)

万葉集巻第二143‐144番歌(岩代の崖の松が枝結びけむ人は)~アルケーを知りたい(1264)