柿本人麻呂の万葉集207-209番歌~アルケーを知りたい(1172)

▼自分に読解力が足りないので、この挽歌、人麻呂が「泣血哀慟」というほどには・・・と思ってしまった。その理由は、①「見まく欲しけど」会いに行かなかった。②「後も逢はむ」と思って会うのを控えた。③逝去を知ったのは「使の言へば」によるものだった。

 柿本朝臣人麻呂、妻死にし後に、泣血哀慟して作る歌二首 幷せて短歌
天飛ぶや 軽の道は 
我が妹子が 里にしあれば 
ねもころに 見まく欲しけど 
やまず行かば 人目を多み 
数多く行かば 人知りぬべみ 
さね葛 後も逢はむと 
大船の 思ひ頼みて 
玉かぎる 岩垣淵の 
隠りのみ 恋ひつつあるに 
渡る日の 暮れ行くがごと 
照る月の 雲隠るごと 
沖つ藻の 靡きし妹は 
黄葉の 過ぎてい行くと 
玉梓の 使の言へば 
梓弓 音に聞きて<一には「音のみ聞きて」といふ> 
言はむすべ 為むすべ知らに 
音のみを 聞きてありえねば 
我が恋ふる 千重の一重も 
慰もる 心もありやと 
我妹子が やまず出で見し 
軽の市に 我が立ち聞けば 
玉たすき 畝傍の山に 
鳴く鳥の 声も聞こえず 
玉桙の 道行く人も 
ひとりだに 似てし行かねば 
すべをなみ 妹が名呼びて 
袖ぞ振りつる<或る本には「名のみを聞きてありえねば」といふ句あり> 万207

 短歌二首
秋山の黄葉を茂み惑ひぬる 妹を求めむ山道知らずも<一には「道知らずして」といふ> 万208
*秋の山の黄葉の間に迷い込んだ妻を追い求めたい。しかしその山道が分かりません。

黄葉の散りゆくなへに玉梓の 使を見れば逢ひし日思ほゆ 万209
*黄葉が散っているときに手紙の配達人を見かけると妻のことを思い出す。

【似顔絵サロン】柿本人麻呂(660-724)の同時代人。皇極天皇 こうぎょくてんのう 594 - 661 第35代天皇と第37代天皇(斉明天皇)。舒明天皇の皇后。天武天皇の母親。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetailLink?cls=d_utabito&dataId=201
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%BF%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E9%BA%BB%E5%91%82
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/hitomaro2_t.html

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