柿本人麻呂の万葉集220-222番歌~アルケーを知りたい(1176)

▼今回は、讃岐の海岸の岩場に横たわっている死人を見て人麻呂が作った歌。
▼人麻呂はその人を見て「家知らば 行きても告げむ 妻知らば来も問はましを(その人の家が分かれば行って知らせるものを、妻が知ったらかけつけて言葉をかけるものを)」と思い、その人に妻がいれば、妻はおほほしく待ちか恋ふらむ はしき妻らは(消息が分からないまま待ち焦がれているのだろう)」と思う。

 讃岐の狭岑の嶋にして、石中の死人を見て、柿本朝臣人麻呂が作る歌一首 幷せて短歌
玉藻よし 讃岐の国は
国からか 見れども飽かぬ
神からか ここだ貴き
天地 日月とともに
足り行かむ 神の御面と
継ぎ来る 那珂の港ゆ
船浮けて 我が漕ぎ来れば
時つ風 雲居に吹くに
沖見れば とゐ波立ち
辺見れば 白波騒ぐ
鯨魚取り 海を畏み
行く船の 梶引き折りて
をちこちの 島は多けど
名ぐはし 佐岑の島の
荒磯面に 廬りて見れば
波の音の 繁き浜辺を
敷栲の 枕になして
荒床に ころ臥す君が
家知らば 行きても告げむ
妻知らば 来も問はましを
玉桙の 道だに知らず
おほほしく 待ちか恋ふらむ
はしき妻らは 万220

 反歌二首
妻もあらば摘みて食げまし沙弥の山 野の上のうはぎ過ぎにけらずや 万221
*妻がいてくれたら一緒に摘んで食べただろうに。沙弥の山の野草(嫁菜)は盛りが過ぎてしまった。

沖つ波来寄る荒磯を敷栲の 枕とまきて寝せる君かも 万222
*沖から波が寄せる荒磯を枕に寝ている人が見える。

【似顔絵サロン】柿本人麻呂(660-724)の同時代人。推古天皇 すいこてんのう 554 - 628推古天皇36年4月15日 第33代天皇。日本初の女帝。父親は欽明天皇。敏達天皇の妻。皇太子は厩戸皇子。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetailLink?cls=d_utabito&dataId=201
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%BF%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E9%BA%BB%E5%91%82
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/hitomaro2_t.html

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