大伴家持の万葉集1485-1491番歌~アルケーを知りたい(1215)

▼ほととぎすが来ないと言っては歌を詠み、来たと言っては歌を詠む。鳴かないといって歌を詠み、鳴いたと言っては歌を詠む。ほととぎすと家持の交流ぶりが面白い。
▼植物の実に糸を通して数珠にするのは子どもの頃、やっていた。はるか昔からやっていたのだった。

 大伴家持が唐棣花(はねず)の歌一首
夏まけて咲きたるはねずひさかたの 雨うち降らばうつろひなむか 万1485
*夏を待ち受けていたかのように咲いたハネズの花。久しぶりに雨が降ったので色が変わるのではないか。

 大伴家持、霍公鳥の晩く喧くを恨むる歌二首
我がやどの花橘をほととぎす 来鳴かず地に散らしてむとか 万1486
*我が家の花橘にホトトギスが来たけど、鳴かずに花だけ散らしていくのか、おい。

ほととぎす思はずありき木の暗の かくなるまでに何か来鳴かぬ 万1487
*ほととぎすよ、思ってもなかったぞ。木が茂って暗くなるほどなのになぜ来て鳴かないのかい?

 大伴家持、霍公鳥を懽ぶる歌一首
いづくには鳴きもしにけむほととぎす 我家の里に今日のみぞ鳴く 万1488
*どこかではもう鳴いていたのか、ほととぎずよ。我が家の庭では今日初めて鳴いたよ。

 大伴家持、橘の花を惜しむ歌一首
我がやどの花橘は散り過ぎて 玉に貫くべく実になりにけり 万1489
*我が家の橘の花が散って、糸を通して数珠にできる実になった。

 大伴家持が霍公鳥の歌一首
ほととぎす待てど来鳴かずあやめぐさ 玉に貫く日をいまだ遠みか 万1490
*ほととぎすを待っているのだけど来て鳴かない。あやめ草を薬の玉にしてさし通す日がまだ先だからかな。

 大伴家持、雨日に霍公鳥の喧くを聞く歌一首
卯の花の過ぎば惜しみかほととぎす 雨間も置かずこゆ鳴き渡る 万1491
*卯の花が散るのが惜しいのか、ほととぎすよ。雨が降っているのにひっきりなしに鳴きながら飛んでいく。

【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。3歳年上。藤原 真楯 ふじわら の またて 715 - 766 公卿。733年に山上憶良の病気見舞いをした人。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

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