大伴家持の万葉集1566-1569番歌~アルケーを知りたい(1217)

▼今回は家持が詠った秋の歌。秋を表すのに、雁、秋の田、穂、山の色づき、清く照る月夜、などの視覚ワードを使っている。雁が鳴く、という聴覚ワードもある。時間帯は夜もあれば昼もある。距離感は近いところから自分も濡れる雨、田んぼ、その上を飛ぶ雁、その上の雲、向こうに見える山、そして月。ワイドレンジだ。

 大伴家持が秋の歌四首
ひさかたの雨間も置かず雲隠り 鳴きそ行くなる早稲田雁がね 万1566
*雨が降る中、早稲田の上を雲に隠れて飛びながらひっきりなしに鳴いている雁たちよ。

雲隠り鳴くなる雁の行きて居む 秋田の穂立繁くし思ほゆ 万1567
*雲に隠れて雁が鳴きながら飛んでいく。秋の田の稲穂がびっしり立っている様子が思い浮かぶ。

雨隠り心いぶせみ出で見れば 春日の山は色づきにけり 万1568
*雨が続いて心がふさぐので外に出てみると春日の山が色づいている。

雨晴れて清く照りたるこの月夜 またさらにして雲なたなびき 万1569
 右の四首は、天平八年丙子の秋の九月に作る。
*雨が上がって月が清く照り渡っている夜だ、雲よ、たなびかないでおくれ。

【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。4歳年上。ピピン3世 Pippin III 714 - 768 フランク王国の国王。カール・マルテルの息子。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

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