大伴家持の万葉集1581-1591番歌~アルケーを知りたい(1218)

橘奈良麻呂が宴を開いたときに集まった人々が詠んだ歌のコレクション。奈良麻呂の2首で始まり、家持の弟の書持を含む男女混合の8首の歌が続き、最後を家持で締める。
▼みな思い思いに紅葉を手折ってかんざしにしている。

 橘朝臣奈良麻呂、集宴を結ぶ歌十一首
手折らずて散りなば惜しと我が思ひし 秋の黄葉をかざしつるかも 万1581
*散ってしまうと勿体ないと思って秋の黄葉を手折ってかんざしにしましたよ。

めづらしき人に見せむと黄葉を 手折りぞ我が来し雨の降らくに 万1582
 右の二首は橘朝臣奈良麻呂。
*めづらしい人に見せるために雨にもかかわらず黄葉を手折って参りました。

黄葉を散らすしぐれに濡れて来て 君が黄葉をかざしつるかも 万1583
 右の一首は久米女王。
*黄葉を散らしてしまうような雨の中を濡れながらやって来ました。あなたが手折ってくれた黄葉のかんざしにしました。

めづらしと我が思ふ君は秋山の 初黄葉に似てこそありけれ 万1584
 右の一首は長忌寸が娘。
*めずらしいと思う我が君は、秋の山の黄葉の美しさに似ていらっしゃいます。

奈良山の嶺の黄葉取れば散る しぐれの雨し間なく降るらし 万1585
 右の一首は内舎人県犬養宿禰吉男。
*奈良山の嶺で黄葉を手折ると、しぐれと黄葉が一緒に降るらしい。

黄葉を散らまく惜しみ手折り来て 今夜かざしつ何か思はむ 万1586
 右の一首は県犬養宿禰持男。
*黄葉が散るのを惜しので手折って持ってきました。今夜かんざしにしたので心残りがありません。

あしひきの山の黄葉今日もか 浮かび行くらむ山川の瀬に 万1587
 右の一首は大伴宿禰書持。
*山の黄葉は今日も山川の瀬に浮かんで流れて行くのでしょう。

奈良山をにほほす黄葉手折り来て 今夜かざしつ散らば散るとも 万1588
 右の一首は三手代人名。
*奈良山を飾っている黄葉を手折り、今夜かんざしにしました。あとは散ってもよろしい。

露霜にあへる黄葉を手折り来て 妹はかざしつ後は散るとも 万1589
 右の一首は秦許遍麻呂。
*露や霜にあってきた黄葉を手折って持ってきました。それを妻がかざしました。後は散ってもよろしい。

十月しぐれにあへる黄葉の 吹かば散りなむ風のまにまに 万1590
 右の一首は大伴宿禰池主。
*十月のしぐれにあった黄葉は風が吹くと散ることでしょう。

黄葉の過ぎまく惜しみ思ふどち 遊ぶ今夜は明けずもあらぬか 万1591
 右の一首は内舎人大伴宿禰家持。
以前は、冬の十月の十七日に、右大臣橘卿が旧宅に集ひて宴飲す。
*黄葉の季節が過ぎるのを惜しみながら仲間が集まって遊ぶ今夜は明けないで欲しいものです。

【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。4歳年上。キルデリク3世 Childeric III 714 - 754 メロヴィング朝の最後(第14代)の国王。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集二』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html
 

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