大伴家持の万葉集3957-3959番歌~アルケーを知りたい(1224)

▼家持が弟の書持の逝去を悲しむ歌。遠方に出かける自分を見送ってくれた元気な弟。その弟の使者が来たので、どんなニュースが届いたのかなと喜んでいると、内容は出まかせの嘘かおよづれの たはことと思わせるもの。一転して悲しみに。その心情を詠う。短歌では、弟は今は雲になってたなびいているのか、とか、弟に荒磯の波を見せてやりたかったと詠う。


 長逝せる弟を哀傷しぶる歌一首 幷せて短歌

天離る 鄙治めにと 

大君の 任けのまにまに 

出でて来し 我れを送ると 

あをによし 奈良山過ぎて 

泉川 清き河原に 

馬留め 別れし時に 

ま幸くて 我れ帰り来む 

平らけく 斎ひて待てと 

語らひて 来し日の極み 

玉桙の 道をた遠み 

山川の へなりてあれば 

恋しけく 日長きものを 

見まく欲り 思ふ間に 

玉梓の 使の来れば 

嬉しみと 我が待ち問ふに 

およづれの たはこととかも 

はしきよし 汝弟の命 

なにしかも 時しはあらむを 

はだすすき 穂に出づる秋の 

萩の花 にほへるやどを<言ふこころは、この人ひととなり、花草花樹を好愛(め)でて多(さは)に寝院の庭に植ゑたり。ゆゑに「花にほへる庭(やど)」といふ>

朝庭に 出て立ち平し 

夕庭に 踏み平げず 

佐保の内の 里を行き過ぎ 

あしひきの 山の木末に 

白雲に 立ちたなびくと 

我れにつげつる<佐保山に火葬す。ゆゑに「佐保の内の里を行き過ぎ」といふ> 万3957


ま幸くと言ひしものを白雲に 立ちたなびくと聞けば悲しも 万3958

*無事に過ごしなさいよと言っていたのに、白雲になってたなびいていると聞く。何と悲しいことか。


かからむとかねて知りせば越の海の 荒磯の波も見せましものを 万3959

*こんなことになると分かっていたら、越中の海の荒磯の波を見せてやったのに。

 右は、天平十八年の秋の九月の二十五日に、越中守大伴宿禰家持、遥かに弟の喪を聞き、感傷しびて作る。


【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。9歳年上。顔 真卿 がん しんけい 709 - 785 唐代の政治家・書家。中国史で屈指の忠臣。唐代随一の学者・芸術家。















〔参考〕

伊藤博訳注『新版 万葉集四』角川ソフィア文庫。

https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81

https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

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