大伴家持の万葉集465-469番歌~アルケーを知りたい(1208)

▼家持が仲の良かった妻を亡くした後、寂しく悲しく心痛く妻を偲ぶ歌。

 朔に移りて後に、秋風を悲傷しびて家持が作る歌一首
うつせみの世は常なしと知るものを 秋風寒み偲ひつるかも 万465
*現実の世は安定することがない。秋風が寒くなると故人を偲ぶ気持ちになる。

 また、家持が作る歌一首 幷せて短歌
我がやどに 花ぞ咲きたる
そを見れど 心もゆかず 
はしきやし 妹がありせば 
水鴨なす ふたり並び居 
手折りても 見せましものを 
うつせみの 仮れる身にあれば 
露霜の 消ぬるがごとく 
あしひきの 山道をさして 
入日なす 隠りにしかば 
そこ思ふに 胸こそ痛き 
言ひもえず 名付けも知らず 
跡もなき 世間もあれば 
為むすべもなし 万466

 反歌
時はしもいつもあらむを心痛く い行く我妹かみどり子を置きて 万467
*時はいつでもあるものなのに、我が妻は幼子を残して逝ってしまった。

出でて行く道知らませばあからじめ 妹を留めむ関も置かましを 万468
*我が家から出た先の道があらかじめ分かっていれば、我が妻を留める関所を置いていたのに。

妹が見しやどに花咲き時は経ぬ 我が泣く涙いまだ干なくに 万469
*妻が眺めていたわが家の庭に花が咲き、時が経った。しかし私の涙はいまだに止まることがない。

【似顔絵サロン】大伴家持(718-785)の同時代人。3歳年下。ジャービル・イブン・ハイヤーン Jābir b. Ḥayyān 721 - 815 バグダードの錬金術師。「アルカリ」の命名者。アルカリは植物の灰の意。














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_utabito&dataId=174
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BC%B4%E5%AE%B6%E6%8C%81
https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/yakamot2.html

コメント

このブログの人気の投稿

万葉集巻第二147‐149番歌(天の原振り放け見れば大君の)~アルケーを知りたい(1266)

万葉集巻第三417‐419番歌(岩戸破る手力もがも)~アルケーを知りたい(1298)

万葉集巻22番歌(常にもがもな常処女)~アルケーを知りたい(1242)