万葉集巻第二151‐154番歌(かからむとかねて知りせば)~アルケーを知りたい(1267)

▼天智天皇の崩御を悲しむ歌。153番の長歌は大后の歌で前回の147-149番に続く歌。天智天皇に仕えていた額田王、舎人吉年、石川夫人の歌の間に収まっている。

 天皇の大殯の時の歌二首
かからむとかねて知りせば大御船 泊てし泊りに標結はましを 額田王 万151
*こんなことになるとあらかじめ分かっていたなら、天皇の御船が停泊している場所に邪霊が入らないよう結界を張っていたのに。

やすみしし我が大君の大御船 待ちか恋ふらむ滋賀の唐崎 舎人吉年 万152
*我が天皇の御船がいつ来るのだろうと待ち焦がれているのではないでしょうか。志賀の唐崎では。

 大后の御歌一首
鯨魚取り 近江の海を 
沖放けて 漕ぎ来る船 
辺付きて 漕ぎ来る船
沖つ櫂 いたくな撥ねそ 
辺つ櫂 いたくな撥ねそ 
若草の 夫の 
思ふ鳥立つ 万153
*近江の海の沖を漕ぎ進む船よ、近くを漕ぎ進む船よ、つがいの鳥が驚いて飛び立たないよう、櫂を激しく漕がないで。

 石川夫人が歌一首
楽浪の大山守は誰がためか 山に標結ふ君もあらなくに 万154
*御料地の番人は誰のために境界線を張っているのか。天皇はもういらっしゃらないのに。

【似顔絵サロン】蘇我倉山田 石川麻呂 そがのくらやまだ の いしかわまろ ? - 649大化5年5月11日 飛鳥時代の豪族。乙巳の変では中大兄皇子・中臣鎌足の側。石川夫人の父親?














〔参考〕
伊藤博訳注『新版 万葉集一』角川ソフィア文庫。
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/dicDetail?cls=d_kanno&dataId=2

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